同居の試み

ページID1008256  更新日 令和6年1月24日

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同居…他にあまりいい言葉が思いつきませんが、動物園ではよく使われる言葉です(少なくともウチの園では)。人間社会では、家族や親せき、友人などが一緒の家で暮らすときに使われますが、動物園でも同じ獣舎に動物同士を一緒にするときにこの言葉を使います。ただ、一緒にする関係が必ずしも家族や血縁とは限らず、いわば他人(?)同士が突然一緒になるケースもあります(そのほうが多い)。

動物園ではよくほかの園と動物のやり取りを行います。複数で飼っていた動物が亡くなった場合や、単独で飼っていた動物の繁殖を目指す場合、新たなペアを形成する場合など、同居に至るケースは結構な頻度で生じます。人工哺育で育った個体を群れに合流させる場合などもあります。その際、同じ寝室や展示場に入れる=つまり同居させるわけですが、いきなり入れることはある意味リスクを伴います。動物種にもよるでしょうが、大方の動物は新しい環境に敏感です。同じ種が一緒になる場合もこれにあたります。また、自分の暮らすエリアに他者が入ることを拒むことも考えられます。そうした場合、突然の同居により闘争が起こり、重大な結果を引き起こすことがあります。のみならず同居後も、個体間の争いは時として起こります。しかし、動物園としては、単独飼育を選択しない限り同居の壁は常に乗り越えなければならない壁として存在します。このため、動物園では同居についてはとても気を使う仕事になります。

以前、人工哺育で育ったチンパンジーを群れ入れさせたことがありました。かつて飼育していたメスのゴウやオスのリョウマがこれにあたりますが、野生では、群れ社会のチンパンジーは新しく来た個体をいわゆるよそ者と判断した場合、攻撃の対象にされます。これを避けるため、動物園では入念な計画のもと同居・群れ入りを実行してきました。この辺の過程はこれまで担当者のブログなどでも紹介され、大きな混乱もなく比較的早期の群れ入りが果たせたところです。こうした経験をもとに、現在は、今年2歳となった人工哺育のチヨを少しずつ群れに合流できるよう取り組んでいるところです。

このほか、最近ではクロサイの同居も進めてきました。繁殖のため昨年来園した、オスのフーと、メスのサニーです。同居の際は先ずはお互い相手を認識させることから始めます。小動物なら小さなケージに入れてお互いの距離を縮めるなどができますが、クロサイの場合はそうはいきません。このため寝室を隣り合わせることから始めました。寝室は1頭1頭仕切られてるので闘争はおきようがありませんが、問題は展示場(グランド)での同居です。先ずは短時間での同居から始め、徐々に同居時間を長くする作戦ですが、その初日、万が一に備え展示場周りには飼育員や獣医を配し、非常時には消防ホースで水をかけられるような態勢をとりました(いわば水入り、です)。結果から言うと、1回目、2回目とオス、メスとも興奮した様子やメスがオスを押したり突いたりした光景が見られヒヤヒヤしましたが、徐々にその頻度を減らし、今は問題なく同居することができています。

ほかにも、新猛獣舎に併せて来園した2頭のジャガーも同居を試みているところです。そうした動物たちの詳しい同居の経過などは、今後担当者ブログでもお伝えしていきますが、何気なく見ている動物たちの日常の裏側では、スタッフの神経を使う取り組みがあることを少しでも心にとどめて頂けたらと思います。

(園長 生江信孝)

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