皆さんはフィーダーという言葉をご存じですか?
フィーダーとは簡単に説明するとエサ入れのことで、野生と違いすぐに食べてしまいがちな毎日の動物たちのごはんを時間をかけて食べてもらったり、少しでも考えて食べてもらうことで退屈な時間を減らしたり、動物本来の行動を引き出すために役立つ物です。
フィーダーについてご覧になりたい方は、以前のブログや他の飼育員が詳しく説明をしていますのでそちらをご確認ください。
→ (1)仕掛けだらけの動物園 (2)屠体給餌ってなに?
今回のブログはツキノワグマで現在使用している、フィーダー制作の裏側をちょっぴりご紹介したいと思います!
一言に動物園のフィーダーと言っても、ゾウのように大きな動物から、手のひらにサイズの小さなサルまで色んな大きさの動物がいるため、大きさや、形も様々。
フィーダーを製作するときに個人的に考えているのが構想・目的設定・試行・制作・反省です。
(1)構想 まずはその動物がどのように使うかイメージをします。
ツキノワグマは力も強く、二本足で立ちあがることも出来るため頑丈な材料が必要になることが考えられます。
壊されないための材料は何か?動物に対する安全面は大丈夫か?脱柵にはつながらないか?考えることがたくさんあります。
そのうえで「こんな形のフィーダーを作ろうか」と決定します。
(2)目的設定 どんな行動を引きだしたいか?どのくらい採食時間を延長できるか?
今回のフィーダーは野生のツキノワグマが木を揺すってドングリや、木の実を落とす行動が飼育下でも再現できたら、という目的のもと製作をスタートしました。
高い木がない当園のクマ放飼場において、新たな採食行動が増えたらいいなとも思っていました。
(3)試行 すぐに設置できるわけではありません。
動物の中には突然新しい物が設置されると怖がったり、設置できたとしてもすぐに壊してしまう可能性や、そのせいでけがをしてしまう恐れももあります。
徐々に慣れるようにしてみたり、耐久テストを何度も行う必要があります。
耐久テストのため、軸となる塩ビパイプだけを10日間ほど設置しました。
新しいものをみたべべ♀は体をスリスリ。怖がってはいない様子でした。
その後、鉄パイプを設置。クマの力で倒されてないか不安でしたが、これも無事クリア。
倒れても観覧側のガラスに当たらない長さ、クマが上って脱柵しない太さなど、色々と想定もしました。
(4)製作 実際に作ってみる!
鉄パイプの上部に亀甲の金網を傘状にしたものを取り付け、揺すると多少動くあそびを設けたりしました。
つけては取り、つけては取り…作ってみると思うよう様にはいかないもので、その度微調整を行います。
実際に今回作ってみたものもイメージよりかなり不格好なものになってしまいましたが…
無事に完成!!!
(5)反省 実際にツキノワグマが使ってみて、使用感をみて反省します。
今回のフィーダーは前述したように野生のツキノワグマが木を揺らしてドングリや木の実を採る行動を再現しようと考えました。
ナオ♂は初日こそ10分程かかり使い方を試行錯誤していたものの、狙い通り揺らして上部に設置したニンジンやリンゴを落として食べることができました。
一方、べべ♀は上部のエサに気づき揺らす行動をしたものの、なかなかうまくいかずあきらめてしまいました…
ナオはまだ若く、色々なものに興味を示して行動してくれますが、クマの中では高齢にあたるべべには少し難易度が高かったかな・・・と反省点が見えてきました。
今後反省点を活かして改良、また新しい物を作るの参考にしていきたいと思います。
(動画をスクリーンショットしているためテロップが入っています。見づらくてすみません。)
初日は使い方が分からず試行錯誤するナオ♂。木に登って採ろうとする…が、届かない高さに計算済み!
意地悪のように思いますが、ナオ自身に考えてもらうエンリッチメントでもあります。
ゆさゆさ、と揺すり始めましたが、最初はうまくいきません。
あきらめて使い慣れたヘイボール(ボールフィーダー)の方へいってしまいました。
頑張れ!と心の中で祈っていると…再度戻ってきて
おっ!うまく使えた!やった!
イメージとはだいぶ違う形になってしまいましたが、想定していた行動をしてくれてとても嬉しく思いました。
動画をご覧になりたい方は 公式Twitter等をご確認ください。→ 公式Twitter(新しいウインドウが開きます)
色々と偉そうに書いてきましたが、フィーダーの制作なかなかうまくいかず、作っては改良、作っては改良の繰り返しです。
飼育員が試行錯誤しながら、動物ごとに合わせたものにしていくのでうまくいかないこともあります。
次回、動物園に遊びに行った際にはぜひどんなフィーダーがあるか確認してみてください。
その動物がどのように使うか、どんな行動をとるか見るのも面白いと思います。
ちなみに今回のフィーダーの名前は使っている様子が私の出身地の名物花火に似ていることから「三河手筒1号」と命名しました。
(構えた様子や、セットしたニンジンが火花が散っているように見えてきます。)
ぜひ、かみね動物園にお越しいただき目の前で見ていただければと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ちなみに手筒花火は結構な苦行…でも久しぶりやってみたいなと思いました。(クマ担当)