数年前から「イキイキ計画」と題してコツメカワウソの展示場やエサを改良した様子をご紹介していました。狭くて古い展示場ですが、工夫を凝らすことで、カワウソも、見ている皆様も、仕掛け人の飼育員も、イキイキできる、そんな試みです。
以前に行なったものはこちら↓
その1・その2
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/900/blog201302.html
その3
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/900/blog201303.html
その4
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/blog201304.html
その5・その6
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/blog201308.html
その7
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/blog201310.html
その8
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/nakamoto/index.html
※他のブログと一緒になっているので、下にスクロールすると見ることが出来ます
今回の試みは名づけて「イキイキボーン」です!
ボーンと爆発させるような過激な仕掛けは作れないので、「bone(ボーン)=骨」です!
当園ではオスのジュンとメスのなつこの2頭のカワウソを飼育していますが、なつこはとにかく物をかじるのが好きです。展示場内の台をガジガジ、布団代わりの麻袋をガジガジ、しまいには自分の毛をガジガジ・・・。
といった具合にあまり良い癖ではないので、何とかしなければと考えました。
そこでこんなものを用意してみました!
イヌ用のガムです!
形は骨のようですが、牛の皮でできています。100パーセント天然素材なので、かじっても安心!
なによりかじることを目的に作られているのでピッタリの遊び道具です!
水に落としてしまわないように、チェーンで固定していざ!
しかーし!見事にスルーされてしまいました。
(これでおしまい・・・)
ジュンは臭いをかいだり、持ち上げたりと多少の反応は見せてくれたものの、肝心のなつこは全くもって無視でした。もうちょっと気にしてよ~と言いたくなるくらいの無反応でがっかり。
しかし、せっかく入れたのだから、意地でも振り向かせてみせる!
「かじらぬなら、かじらせてみせよう、イキイキボーン」
なつこの食い意地はジュンの比ではありません。そこで、間にペレット(固型飼料)を押し込んでみました。
すると、ガジガジとはいきませんが、一生懸命中から取り出そうとしているではありませんか。かじってはいないけど、まあ今回は良しとしましょう!一回かじる楽しみを覚えればその後使うようになることもあるので、現在はとりあえず様子を見ています。
実はこのイヌ用のガムは、私のアイデアではなく、他の動物園でサルに対して行われていたものを参考にしました。自慢ではないですが、パクリです!ずるーい、と思うかもしれませんが、動物園の世界ではパクリは大切なことです。
野生から動物が入らなくなった今、個々の園館だけで動物を維持していくには限界があり、協力し合わなければ日本の動物園から次々と動物たちが姿を消していくことになります。新しい技術を秘密にするのではなく、情報をオープンにすることによって日本全体の飼育技術が向上し、動物の健康管理や繁殖へとつながります。そのために、飼育員や獣医の研究会や勉強会などが全国で盛んに行われています。新しい技術は自慢してなんぼの世界です。
今回は知り合いの飼育員の方だったので、きちんとパクリましたよと報告させていただきました。その方から「カワウソはかじらなさそう(笑)」と言われて見事にかじらなかったので、逆に意地でもかじらせてやろうという気になりました!仕掛けを作ったから必ず成果が出るというわけではなく、同じ仕掛けでも動物種や個体によって反応はかなり違います。各園で各動物に合わせて色々と工夫する中から、より良い方法が開発されていくのです。
続いて誰か真似してくれないかなと期待しつつ、さて今度は何をパクろうか。
イキイキ計画は今後も続く・・・。
(タヌキにもおすそ分け)
たまにカワウソ担当 中本