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平成27年6月25日(木曜日)

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イルカ問題を考える(これから編)

平成27年6月25日(木曜日)

 これまで編から時間が経ってしまいましたが、イルカ問題と動物園の「これから」について考えていきたいと思います。(「これまで編」はこちらです→http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/nakamoto/p043362.html

ただし、この問題を考える上で、イルカの追い込み漁が良いか悪いかというのは論点が変わってしまうため、あえて触れませんのでご了承ください。

 どうぶつ

まず、押さえておかなれければならないことは、世界の動物園・水族館の流れとして野生から動物を調達するのではなく、自分たちで繁殖させて維持していくことが主流になっているということです。そのためにJAZAがありWAZAがあるのですから。

 現にアメリカでは繁殖技術の確立によって過去20年以上野生からイルカを入れていません。これは事実として受け止めなければなりません。じゃあ日本でもそうすれば良いじゃんと思うかもしれませんが、現実的にはかなり難しいです。イルカを繁殖させるにはそれ相応の施設と技術が必要になります。

新しいことを始めるにはヒト(飼育員や専門職員)モノ(施設や機材)カネが必要です。

 

例えば

日立市では全国で唯一ウミウを捕獲しています。そしてかみね動物園でもそのウミウを展示しています。展示が見づらい上に、繁殖もしたことがありません。(あくまで例ですからね)

そこで、新しく施設を作り直すこととなり、以下の2つの案が出されました。

 1、水槽でウミウが泳いで魚を捕まえる姿を見られる施設

2、ウミウの繁殖を目的とした非公開施設

 さあ、利用者としてはどちらの施設を作って欲しいですか。さらに、自分が経営側だとしたらどちらの施設を作りたいですか。

 ウミウ 鵜取り場

       (ウミウ)                 (鵜捕り場)

1を考えると、利用者としては満足度アップ、経営側としては来園者の増加が期待できるので文句なしですね。2では、特に満足度も来園者数も変わらない。むしろ、見られなくなってしまいます。う~ん良いことないですね。でも、ウミウを繁殖させることができれば野生からの調達に頼らなくて良くなります。さらに研究が進み繁殖技術が確立されることによって、万が一野生のウミウが絶滅の危機に瀕した時にウミウを増やすことに貢献できるかもしれません。

 

極端な例ではありますが、以上を踏まえていかがでしょうか。多くの方が1を選ぶと思います。現実でも2は難しいでしょう。なぜなら日本の動物園・水族館は観光施設、レジャー施設であるからです。施設の評価としても、入園者数が増えたか、それに伴い収入が増えたかに重点が置かれているのが現状です。もちろんそうじゃない部分もたくさんありますが。

そこで、みなさまにはイルカ問題を通して今一度「動物園って何のためにあるのか」を考えてもらいたいのです。JAZAは動物園の役割を「教育」「種の保存」「研究」「レクリエーション」であるとしています。1の案は「教育」と「レクリエーション」に重点が、2の案は「研究」と「種の保存」に重点が置かれています。その意味ではどちらの施設も正しいのです。両方作るに越したことはありませんが、限られた予算の中ではあれもこれもというのは難しいのが現実です。

今の日本の動物園はレクリエーションに特化しています。(その要因は様々あるので詳しい話しは別の機会にしたいと思います。)「動物園=楽しい」これは世界共通認識です。ただ、本当にそれだけでいいのでしょうか。レクリエーション以外にも役割はあります。でも日本の社会にはあまり浸透していませんし、必要とされていません。私たちは日々葛藤しているのです。

 どうぶつ

これから動物園・水族館は変化をしていくことになるでしょう。しかし、その時に私たちだけが変わっても意味がありません。みなさまと一緒に、社会と一緒に動物園・水族館が変わっていくことが必要なのではないでしょうか。
はっきり言ってこのイルカ問題は規模が大きすぎて、一飼育員がどうこうできる話ではありません。また、様々な事情が入り混じっているので、問題自体を語ることは難しいです。しかし、だからと言って、現状を嘆いたり、傍観しているだけで良いとは思いません。だからこそ、自分にできることはなんだろうと考えた時に、みなさまと一緒に動物園・水族館を考えるきっかけにしたいと思い、このブログを書きました。動物園が50年後も100年後もみなさまに愛され、必要とされる施設であり続けるためにこれからもがんばります!!最後まで読んでいただきありがとうございました。

飼育員 中本

 

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