×
閉じる

staff blogスタッフブログ (中本旅人のブログ)

幻のトカゲ

2023年1月13日

昨年末にミヤコカナヘビ飼育管理検討会議というものに当園のビッグボス(園長)と一緒に参加してきた。京都出張なんて羨ましいなと言われるも、京都大学東京事務所という京都でもなくカナヘビの姿形も見られそうにない東京駅のオフィス街への出張だった。動物園水族館関係者や環境省、現地の研究者などが集い、読んで字のごとく「ミヤコカナヘビ」という生き物の飼育や管理について話し合う会議である。

ミヤコカナヘビ

     <ミヤコカナヘビ>

ミヤコカナヘビは日本の宮古諸島にのみ生息する希少なカナヘビの仲間で、絶滅の危機に瀕していることから環境省と日本の動物園水族館が連携して生態解明や繁殖に取り組んでいる。そのあたりの詳しい話は添付のポスターをご覧いただきたい。

ミヤコカナヘビ(PDF形式 1,333キロバイト)

その会議の中で「ミヤコカナヘビの展示」についての議論があった。ミヤコカナヘビの展示は2021年から神戸どうぶつ王国(兵庫県)、鳥羽水族館(三重県)、上野動物園(東京都)、かみね動物園(茨城県)の4園館で行われている(そこでしか見られないんですよ!)。固有種、希少種、絶滅危惧種、新種、生息域外保全などキーワードがたくさんある中で、「ヘビじゃないよ問題」という話題が印象に残った。「ミヤコカナヘビ」という看板の文字を見て、どの園館でも「へ~、なんか緑色の珍しいヘビなんだね」と展示を通過していく人がたくさんいるんだとか。たしかに尻尾の切りようによっては「ミヤコカナ・ヘビ」である。おまけに尻尾が長いのでヘビに見えないこともない。

 ミヤコカナヘビ ミドリニシキヘビ

     <ミヤコ・カナヘビ>           <ミドリニシキ・ヘビ>

日立市民にとってカナヘビ(ニホンカナヘビ)は春から秋にかけてどこでも見かける普通のトカゲであり「カナチョロ」の愛称で親しまれている。園内でも時期によっては毎日見かけるほどである。ところが、上野動物園の方に話を聞いたら東京ではいる場所にはいるがどこでも見かける生き物ではないという。私は東京出身だが子供の頃はカナヘビをよく追いかけまわしていた記憶があり身近な生き物であった。実はニホンカナヘビは『東京都レッドリスト(本土部)2020年版』でそれまでの2類(絶滅の危機が増大している)から1類(絶滅の危機に瀕している)にレベルが引き上げられている。あの毎日追いかけまわしていたニホンカナヘビですら絶滅危惧種であり身近な生き物ではなくなっているのだ。そりゃヘビにもなっちゃうよなと改めて思った。余談であるが、円山動物園の方と話をしたら北海道にはニホントカゲは生息していないのでニホンカナヘビは身近だが、ニホントカゲは身近ではないんだとか。

ニホンカナヘビ ニホントカゲ 

<日立ではカナチョロことニホンカナヘビ> <日立ではトカゲことヒガシニホントカゲ>

宮古島では生活の中で当たり前のように見られていたミヤコカナヘビ、東京では私の遊び相手だったニホンカナヘビ、いずれも身近な生き物に戻さなければと飼育員として強く思う出張となった。

みやこかなへび ニホンカナヘビ

尾が青いニホントカゲの幼体をレアトカゲと呼んで必死に探していたことを懐かしく思う 中本

2023年1月13日