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staff blogスタッフブログ (中本旅人のブログ)

ひなたとかげ

2018年12月3日

11月18日に「はちゅウるい館」が盛大にオープンしました!というかオープンできました!なんとか間に合った・・・。燃え尽きた・・・。とホッとしたのも束の間で慣れない爬虫類たちのお世話に追われる毎日です。

オープン ウミウ

      <オープン式典>             <ウミウもお引越し>

はちゅウるい館の成り立ちやセレモニーの様子は園長やほかの皆様に譲って、今回は飼育のお話をしてみたいと思います。なぜなら!良いタイトルを思いついたからです。笑


さて、はちゅウるい館にはカメ、ワニ、トカゲ、ヘビが約40種類ほど飼育展示されています。これまでかみね動物園で飼育していた爬虫類(私が勤めてから)はカメの仲間とヘビの仲間が10種類程度でした。ワニはその昔にメガネカイマンが熱帯鳥舎という今は無き建物で飼育されていたそうで、トカゲもグリーンイグアナが同じ建物にいたそうです。そんなわけで今回新しくたくさんの動物が来ましたが、現役職員としてはトカゲとワニは初めまして状態でした。(カナヘビなどは企画展で捕まえて飼ったりはしていましたが)

エボシカメレオン クチヒロカイマン

     <エボシカメレオン>           <クチヒロカイマン>

爬虫類全般に言えることですが、彼らは周りの環境にとても依存しており、適応力が哺乳類に比べて低いといわれています。そもそも私たち恒温動物と違い、爬虫類は体温を自分で調節できない変温動物なので快適に過ごせる温度を作ってあげなければなりません。さらに、彼らは自分達の生活に合わせて、日光浴(バスキング)をしたり、水に入ったり場所を移動しながら体温調節を行います。つまり、部屋の温度を何度にすれば良いというだけでなく、暑い場所、涼しい場所など彼らが選択できるようにセッティングしなければなりません。「温度勾配」といいますが、これが一苦労でした。

フトアゴヒゲトカゲ フトアゴヒゲトカゲ

    <日光浴で体温上昇中>           <日陰でクールダウン>

また、昼行性や草食性の爬虫類は紫外線を必要とする種類が多く、飼育しているトカゲやカメも紫外線を必要としている種類がたくさんいます。哺乳類は外に展示するのが基本なので、あまり気にしたことがありませんでしたが、これがもう大変!一言で紫外線と言っても、食欲増進や脱皮を促すUVA、カルシウム代謝に必要なUVBなど種類も違います。自然界では「太陽光」で全てを解決できるのですが、屋内の施設ではそうもいきません。窓を作って太陽を当てれば良いじゃんと思いますが、密閉された屋内で太陽をあててしまうと温度が上がりすぎて死んでしまう危険があります。これらの温度と光を解決してくれるのがライトです。はちゅウるい館には様々な5種類のライトが取り付けられています。

ライト

  <展示の上にはライトがいっぱい>

1、バスキングライト

狭角に発射されてスポットを照らす。高い温度と強い紫外線を出す日光浴用のライト。

2、保温ライト

全体的に広がって温かい光を出す。赤い光は爬虫類には見えないので夜間でも使える保温用のライト。

3、メタルハライドライト

高温、高質でとても明るい日光浴用のハイスペックライト。お値段が・・・。

4、蛍光灯

全体を明るく照らすが、熱はあまり出ない。紫外線入りのものもあるので照明と紫外線を兼用できる。

5、LEDライト

とても明るいが熱をほとんど発しない。展示や通路の照明用ライト。

ライト ライト

<左:バスキングライト 中:蛍光灯 右:保温ライト 天井を見上げるとこんな感じです >

これらのライトを使い分けてそれぞれの動物に適した環境を作っていきます。

これがばっちりハマると・・・。

イグアナ イグアナ

    <グリーンイグアナ!>          <裏から見るとライトが>

マングローブオオトカゲ マングローブオオトカゲ

   <マングローブオオトカゲ!>         <上を見るとライトが>

動物たちが自分の好きな場所を選んでいるので、日光浴をする場所(ホットスポット)を作ってあげると展示として見せたいところに誘導することができます。ホットスポットは動物にも人間にもホットなスポットです!

さらに、彼らは自然界では朝昼夜を感じながら行動をしています。屋内施設だと電気をつけるか消すしかないので朝方や夕方を作るのが大変です。はちゅウるい館ではライトを調節して暗い時間と明るい時間を作って朝夕を作っています。実は開館後(9時30分から)と閉館前の30分間は館内は暗めの照明にして、展示としても朝夕を演出しているんですよ!!雰囲気もガラッと変わるので要注目です!ただ、これを手動で行うのはとても大変なのでタイマーを使って照明の調整を行っています。

マングローブオオトカゲ タイマー

  <夕方のマングローブオオトカゲ>           <タイマー>

更にもう一つ光で苦労したのがカメレオンモリドラゴンという樹上性のトカゲです。

カメレオンモリドラゴン

   <カメレオンモリドラゴン>

彼らの飼育方法を調べると日光浴は好きだけど強い光は嫌いとのこと。なぞなぞか!!そこで他の動物園の方にアドバイスをもらったところ木漏れ日のような光を好むとのことなので網をつかってみました。

網 網

     <倉庫で見つけた網>            <木漏れ日?を演出>

カメレオンモリドラゴン 

   <気に入ってくれたかな?>

そう!爬虫類飼育、とりわけトカゲと光は切っても切れない関係なのです!(トカゲだけに!?)日向と影!日向、トカゲ!ヒナタトカゲ!!!オアトガヨロシイヨウデ。

なんて偉そうなことを書いてきましたが、実はほとんど他の動物園の方々からの受け売りです。ごめんなさい。実際はライト一つとってみても哺乳類とは全然違う世界で、日々試行錯誤をしながら驚きと発見と感動とちょっぴりの苦労を繰り返しています。そんな底抜けに奥が深い爬虫類の世界を、裏話を交えながらこれから皆様にお伝えしていければと思います!!

はちゅウるい館と外の寒暖差で風邪をひきそうな 中本

アシナシトカゲ

<こんな見た目ですがトカゲの仲間です>

2018年12月3日