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staff blogスタッフブログ (中本旅人のブログ)

ブリーディングローン(BL)

2014年12月21日

先日カピバラのオス2頭が那須どうぶつ王国に引っ越しました!

カピバラ

カピバラが引っ越すたびにみなさまから「なんで他の動物園に行っちゃうの」という声をよく聞きます。

そこで今回は、動物園の裏側のお話しを書いてみたいと思います。

 かば

まず、なんで行くかという話をする前に動物はどうやって来るかという話を先にしておきます。

動物園に動物を新たに入れる場合、主に「譲渡」「寄贈」「購入」「交換」「ブリーディングローン」の5つの方法があります。

譲渡・・・タダで譲り受ける

寄贈・・・寄付を受ける

購入・・・お金を払って買う

交換・・・動物同士を交換する(同じ動物の場合もあれば種類が違うこともあります)

ブリーディングローン(BL)・・・動物を借りる

きりん

<キリンの「シゲル」は日立市公園協会からの寄贈>

かつては動物を入れる場合、動物輸入業者からの購入が多かったそうです。しかし、現在では野生動物の減少によって野生から動物をいれることは非常に困難になっています。例えばゴリラはかつて数百万円で購入できたため、全国各地の動物園で見ることができました。しかし、現在は生息数激減から海外から導入することができなくなりました。そのため、現在ゴリラの価値は八千万から一億円とも言われていますが、どんなにお金を出しても購入することはできません。また、よくちびっこから「動物はどこで捕まえてくるの」という質問を受けますが、園内で野生から捕まえてきた動物はごくわずかです。(全国的にも同じことが言えますが、水族館の魚類に限っては捕獲が多いそうです)

ごりら 

  <当園でもゴリラは購入でした>

サイ

<クロサイの「メトロ」はアメリカのメトロポリタン動物園から購入>

 また、病気を国内に持ち込まないようにということから、数がたくさんいる動物でも日本に入れることが難しくなっています。たとえばネズミの仲間やサルの仲間、牛の仲間などは、たとえ海外の動物園にいる動物でも日本に連れてくることが難しいです。
無理ではないのですが、法律上の問題(日本と輸出国の両国の法律をクリアする必要がある)やいくつもの規制、その間に発生する莫大な費用など現実的には不可能です。例えば検疫施設(動物が病気を持っていないか確認する場所)がない地域から動物を入れる場合、現地に検疫施設を建設しなければなりません。この時点でいくらかかるんだ!

ビーバー

<ビーバーはアメリカにたくさん生息している動物ですが、アメリカから日本へのネズミの仲間の移動は全面禁止されています>
 

動物も年を重ねれば死んでしまいます。なのに動物が新しく入らなければ動物園から動物がいなくなってしまいます。野生もダメ、海外もダメということで、国内にいる動物でそれぞれの「種」を維持していくために始まったのがブリーディングローン(BL)です。ブリーディングローンとは動物園や水族館における繁殖(Breeding ブリーティング)を目的とした動物の貸し借り(Loan ローン)のことです。
 レッサ―パンダ

     <レッサーパンダはBL>

さて、ここでカピバラの話に戻りますが、2012年に当園にいたオスの個体が亡くなってしまったので、新しくオスとメスを入れることになりました。オスの「コタツ」は埼玉こども自然動物園から「譲渡」で、メスの「ハナ」は那須どうぶつ王国から「BL」でやってきました。

カピバラ カピバラ

      <コタツとハナ>             <赤ちゃん誕生>

そのため、コタツの所有権はかみね動物園にありますが、ハナのは借り物なので所有権が那須どうぶつ王国にあります。

では、生まれた子供は誰のもの?というのが今回の話のミソです!

実は生まれた子供の所有権はBL契約を結ぶ際に園館の話し合いで決まります。ハナをお借りする際には、生まれた仔を半分ずつにするという契約になりました。(その他にもサル類など出産数が1頭の動物は、1仔目・2仔目、オス・メスなどで分けることがあります。)

従って、生まれた子供の半分はどうぶつ王国のものですから、毎回どうぶつ王国に引っ越ししているのです

長々と説明しましたが、なんとなくわかっていただけましたでしょうか。 
 

今日本の動物園にいる動物たちは深刻な状況にあります。新規動物が入らないことによって個体の高齢化や血縁が濃くなるなど様々な問題が起きています。このまま何もしなければ動物園の動物は確実に絶滅します。現にゴリラやアフリカゾウなどは今後数十年で日本からいなくなるといわれています。じゃあBLで動かせば良いじゃんという単純な話にはならないのが悩みです。

ゴリラ ゴリラ

<当園最後となったゴリラ「ダイスケ」。このままだと近い将来日本中でその姿が見られなくなってしまいます>

まず、動物を貸し出すということはその動物がいなくなるということです。特にゾウやゴリラなど動物園の看板動物になると尚更です。動物によっては1頭数千万円もするものもいます。民間の動物園なら会社の財産、当園のように市営なら市の財産(税金)です。それを繁殖のためだからといってハイどうぞ!とはいきません。繁殖は大事だし協力したいけれど自分の園からいなくなるのはちょっと・・・というジレンマを抱えています。また、移動自体に費用がかかりますし、移動中や移動先で死んでしまうリスクもあります。無事に動かせても必ず繁殖するとも限りません。そして何より「動物が見られなくなる」という皆さまの負担があります。なんでいなくなるの?というのはまさにそんな思いからだと思います。だからこそ、みなさんの理解や後押しがあってこそブリーディングローンが活発に行われるようになります。


私がこのブログでお伝えしたいのはみなさんにこの問題を知った上で、動物を喜んで送り出してあげて下さい!ということです。かみね動物園でもカピバラを始め、キリン、チンパンジー、レッサーパンダ、コツメカワウソ、マンドリル・・・BL契約の動物が数多くいます。感情的にはかみね動物園で一生を終えてほしいですが、動物園に残るということは繁殖の機会を失うということでもあります。野生でも子離れがあるように、親元を離れて全国で子孫を残す事の方がその個体にとっても良い事ではないでしょうか。

少し寂しい気持ちはありますが、かみね動物園の動物が全国に出ていくのは嬉しいことなんだ!誇らしいことなんだ!と笑顔で送り出してあげて下さい!そして、寂しかったら新天地にも足を運んで会いに行ってあげて下さい!
 クロサイ サイ

<クロサイの子供は当園からBLで九州に行きました>

カピバラの話からだいぶ脱線しましたが、これを読んで何か感じていただけたら幸いです。

動物園のブログでは動物についてはよく情報発信をしますが、動物園についての情報はあまり発信してきませんでした。今後は積極的に「動物園」についても情報を発信していきたいと(勝手に)思っていますのでお楽しみに!!

カピバラ担当 中本 

2014年12月21日