2023年1月15日、マンドリルのケンシロウが亡くなりました。16歳という若さでした。(寿命は25年程度と言われています)
<ケンシロウ、2月7日に17歳の誕生日を迎えるはずでした>
2022年8月から下半身麻痺の症状が見られ、寝たきりの生活となっていました。当初、かなりの元気消失状態で、回復するのか非常に厳しい状態ではありましたが、本当に驚くほどの回復力を見せてくれました。治療の期間は寝室での生活だったため、職員以外は姿をみることが出来ない状態ではありましたが、そんな中多くの皆様より応援のメッセージをいただき、その存在の大きさを改めて感じました。まだ若くこれからもっと活躍する姿をみられるものと思っていたため、とても残念な気持ちではありますが、これまでケンシロウがかみね動物園でどのように過ごしてきたのか、この場を借りて皆様に少しお話ししたいを思います。
ケンシロウは2006年に埼玉県にある東武動物公園で生まれ、2010年、4歳の時にかみね動物園にやってきました。今の姿からは想像も出来ないほど体は小さく、顔の色も控えめ、まだまだ若者といった様子でした。当時はとても人懐っこく、担当者が作業をしているとずーっとその姿を見ているような、そんな様子でした。
<来園時の写真、まだまだ幼い顔つきです。担当者のことをよく目で追っていました。>
しばらく一頭で暮らしていましたが、2014年、待望のお嫁さん、リエルがやってきました。2頭の性格は正反対でしたが、お見合いのときから良い雰囲気で、すぐ一緒に暮らせるようになりました。その頃からケンシロウの人懐っこさは少し抜け、また、体もググっと大きくなり、顔の色もとても鮮やかに成長しました。
<繊細ですこし臆病なケンシロウ、おてんばで活発なリエル、性格は違いましたが、いつも仲良しでした。>
<顔の色も鮮やか、整った顔立ちで人気を集めていました。>
そして更なる変化を迎えたのが2017年、2頭の間に赤ちゃんが生まれました。(しんご♂は現在安佐動物公園で暮らしています。)生まれてすぐ人工哺育となりましたが、約4か月で群れに戻ることができました。群れ入り後も何かと騒ぎがありましたが(大抵しんごがリエルを怒らせていました…)、何かあるとケンシロウが間に入り、騒ぎを沈めてくれていました。しんごもケンシロウの後ろにいればリエルに怒られないと分かったのか、近くで過ごす姿をよく見かけました。これまで、臆病な性格から少し頼りない部分もありましたが、しんごが群れに入ってから、少しずつですが、色々なことに寛容になっていくのを感じました。2019年にしんごは他園へ引っ越し、少し静かにはなりましたが、その後も2頭は相変わらず仲良く過ごしていました。
<人工哺育になった日から毎日欠かさずお見合いを行いました。ケンシロウは興味津々に様子を見ていました。>
<仲良く?枝を食べています。>
<毎日ケンシロウの毛繕いを欠かさないリエル、してもらってばっかりのケンシロウ…。>
しかし、2022年6月、一年前に発症した関節炎が再発し跛行が見らるようになり検査や投薬を行っていましたが、2か月後の8月には歩くことはおろか自力で座ることも困難となり、寝たきりとなってしまいました。下半身麻痺の状態で、当初は前肢もうまく動かせず、食欲も低下、排せつもうまくできない、本当に厳しい状況でした。そこから、床ずれ防止のため体位変換をはじめ、環境も整え、関節が固まらないよう屈伸運動を行い、症状改善に向けた治療にも取り組みました。ケンシロウの頑張りとケアの甲斐もあり、徐々に元気を取り戻していました。(※10月に更新:マンドリル ケンシロウの近況について)
元気になっていたものの、後肢の麻痺は回復が見られず、また、床ずれもできていたため、しばらくの間は夜も体位変換を行っていました。しかし、11月には夜間体位変換をしなくても平気なくらい床ずれも回復し、上半身を使って積極的に移動することもできるようになりました。12月にはリエルと久々の同居も行い、今より広い部屋へ移動する準備も進めているところでした。
<寝たきりになってから食べるものに偏りがありましたが、徐々にまんべんなく食べるように。普段から好んで食べていた樹皮や樹葉も、以前と同じように食べるようになっていました。>
<寝たきりとなってからリエルとは別々の部屋で過ごしていましたが、ケンシロウの状態が良くなってきたので久々の同居をおこないました。リエルと一緒にいる事でケンシロウにいい変化が起きればと期待しましたが、積極的なリエルに比べ、ケンシロウは少しぎこちない様子でした。>
しかし、今年1月に入ってから動きが徐々に悪くなり、自力で起き上がるのにもかなりの体力が必要となっていました。そして、1月15日、治療と検査のため鎮静をかけていた最中、呼吸が止まり、心拍が弱まり、蘇生を試みましたが、戻ってくることなく、亡くなりました。心臓とそれを覆う膜の間に血液が貯留し、心不全を起こしたものと考えられますが、詳細については現在関係機関に調査をお願いしているところです。下半身麻痺となってから屈伸運動などできる範囲でリハビリを行なっていましたが、寝たきりになる前となってからの状態を比べたところ、関節の状態がかなりの悪化していました。寝たきりになるということとはどういうことか、まざまざと感じさせられました。(※1月更新:マンドリルのケンシロウが亡くなりました)
ケンシロウが来園してから今まで、多くの方に親しまれ、その姿を一目見にたくさんの人が会いに来てくれました。1月22日に行ったお別れ会にも多くの方に足を運んでいただきました。本当にありがとうございました。
<お別れ会の様子、ケンシロウの思い出を振り返りながら、お別れをしました。>
<1月7日~31日まで献花台を設置しました。たくさんのお花やフルーツ、メッセージを頂きました。ありがとうございました。>
かみね動物園に来てから13年間、マンドリルの存在とその魅力を存分に私たちに伝えてくれたケンシロウ。今まで本当にありがとう。そして、最後までケンシロウの回復を信じ応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
とても辛く、悔しく、悲しくもありますが、今回の経験を活かし、今後も動物園に暮らす動物たちの健康を守り、命を繋げていきます。
<いつも穏やかな表情で迎えてくれたケンシロウ。最後まで本当に頑張りました。天国でゆっくり休んでね。>
(リエルが楽しく健康に過ごせるよう、頑張るよ! サルの楽園担当 木村か)