以前からお伝えしている通り、5月12日カバの「バシャン」が亡くなりました。54歳でした。
バシャンは今年の2月から元々悪くしていた関節炎がさらに痛むようで歩くのもゆっくり。プールの昇り降りもやっとのことでした。皮膚もひび割れがひどく薬を塗る毎日。
昨年も同様の症状が出ていましたが5月ごろから回復して初夏には外に出ていたので今年も回復するだろうと思っていたのですが、なかなか良くなりませんでした。
それでも食欲はあったので安心していたのですが、5月7日よりエサをあまり食べなくなりました。
以前より食べづらそうにしてる様子は見られたので草を切ったり、固形飼料を水でふやかしたりして与えてましたが亡くなる前はあまり嚙まなくてすむおからだけを食べていました。
全く口を開けて食べてくれなくなったバシャンに抗生物質を与えようと様子を見に行くと、それまで息継ぎをするためだけに水面から顔を出していたバシャンがなぜかその時だけ階段に足をかけてぐっと顔を出してくれました。注射器に入っている薬を注入したかったのですが、そのまましばらくするとまた水に潜ってしまい、それが私がみた最後の姿です。
2012年に動物園の飼育員になって初めてバシャンに会ったとき、よく食べて穏やかな性格だなあと思いました。自分の子供が小さなときは飼育員に向かってくるような荒々しい一面もあったようですが、20年に渡る末娘との2頭暮らしの間に年を取りすっかり丸くなったようです。
葉っぱのおやつが好き
誕生日の特別なおからケーキは大好き。
プール底の落葉をすくって食べる落葉サルベージも見せてくれました。
冬季、陸でひなたぼっこするときはチャポンにもたれかかって眠っていました。
冬は外に出ず一頭で過ごす時間が増えたので、棒の先にタッチしたらおやつをもらうというゲームを一緒にやりました。暇つぶしになったでしょうか。
54年の生涯の中で私が彼女に関わったのはたった5年ですが、飼育員として彼女の飼育に携われたことに感謝の気持ちしかありません。
もしも話すことができるなら「かみねでの暮らしは幸せでしたか?」と聞いてみたいです。・・・いや、文句ばかり出るかな(苦笑)
<献花台にはたくさんの贈り物> <おからに生前好きだった葉を挿しました>
お別れ会には多くの方が献花に来てくれました。
自分が小さいときからいたカバはバシャンだったんですね、と言ってくださる大人の方が多くいらっしゃって世代を超えて皆さんに愛して頂いたのだと実感しました。
バシャンは亡くなった後、獣医さんに解剖してもらって現在病理検査中です。(詳細分かり次第お知らせします)
カバは寿命が45~50年と言われていて長生きする動物です。全国に約50頭ほどいるカバたちも高齢化がすすみ、晩年のバシャンと同じような症状の個体もいるかもしれません。
私が今まで見てきたことや経験したことは今後のカバ飼育、ひいては多くの動物園動物たちの飼育に役立てられることです。いつまでも寂しがってる場合ではないようです。
<献葉(?)ケーキはチャポンがもぐもぐ>
現在かみねのカバはチャポン一頭です。また新たな個体がやってくるのかとよく聞かれますが今のところ予定は全く立っていません。
カバ担当の飼育員として私が最も考えなければならないことはいかにチャポンを幸せにしてあげられるか。それを考えて行動していこうと思います。
全国のカバたちの命をつないでくれたバシャン、本当にお疲れさまでした。
ゆっくり休んでください。ありがとう。
(飼育員 カバ担当いのうえ)