この季節最大の敵、「紫外線」が勢いを増しています。
塗っても塗っても流れる日焼け止めに彼らを止めるすべは無。
私の二の腕は今アマゾンのネグロ川・ソリモンエス川の合流地点のようになりつつあります。分からない人は調べてみてください。
<飼育員にインタビュー>
さて、この季節になると増えてくるのが自由研究・自由課題のために動物園にやってくる小学生。
好きな動物について調べたり、「動物園」について書こうという子もいます。
ここで働く者からするととてもうれしいことです。
中には飼育員に直接会って話を聞きたいとメールや電話でアポを取る子もいます。事前に質問をFAXで送ってくる子もいます。
知らない大人と話をするのは本当に勇気がいること。そこに挑戦しようとする気持ちに心から拍手したくなります。
夏休みって色んなことに挑戦できるから、たくさんの経験をした子が新学期に少し大人びて見えるのかもしれません。私にはもう20年近く前の話になっちゃいます。ノスタルジック。センチメンタル
ただこの「飼育員への質問」、気になることがあるんですよ。
それは質問の内容。
例えば、
・○○(動物の名前)はどんなところに暮らしているんですか?
よく、動物の生息環境をきかれます。
この質問、何が気になるか分かりますか?
私たちはこれにたいしてすぐに回答することができます。けれど実はその答えは本やネットなど自分たちで調べたものを皆さんにお答えしているだけなのです。
何が言いたいのかというと、つまり飼育員にきく前に自分で調べることが出来るということです。
私はライオン担当ですが、彼らが暮らすアフリカに行ったことはありません。本・インターネット・テレビなどで得た情報からライオンが暮らす環境について知りました。
<クマの指は何本ある?> <よ~く観察すると前脚には5本!>
また、こういった質問もあります。
・○○の指は何本ありますか?
動物の体に関する質問ですね。このような質問を受けた時、わたしはよく「もう動物は見てきた?」と逆に質問します。するとほとんどの子供たちは「まだ」と答えます。
指が何本あるか、すぐに答えることは出来るのですが折角生きた動物がいる動物園なのでまずは動物をじっくり観察してみましょう。その動物の耳はどんな形?尾に毛は生えてる?おなかの模様は見えるか?鳴き声は?動き方は?寝方は?
私たちが一言で答えを言うよりも遥かに多くの知識を得られます。
<私の失敗談、お話します・・・>
ここまで書いたことは少し意地悪に聞こえるかもしれませんが、実は過去に失敗したことがありまして。。。
2年ほど前の夏、トラの自由研究をやりたいという小学生が私にたくさん質問をしてきました。
後日、嬉しいことにその自由研究ができたといって持ってきてくれたのです。私が答えたことが画用紙に色とりどりに書かれていてよくまとまっていたのですが、ちょっと?な部分がありました。
・食肉目 ネコ科 ベンガルトラ
・住んでるところ ネパールやインドに広がる森
・食べ物 牛肉・鶏頭
何がおかしいか分かりますか?
野生のトラは森に棲んでいるシカやイノシシなどをとらえて食べます。
ところがこの自由研究には動物園で与えているエサのメニューがそのまま画用紙に書かれていました。
あくまで「動物園」で与えているエサ内容を答えただけだったのですが素直な小学生はそのままトラの食べ物と認識してしまったようです。
案の定「野生のトラは何を食べていると思う?」と聞くとその子は答える事ができませんでした。
その後、自由研究は直されたようですが小学生には悪いことをしてしまいました。
来園する子供たちに動物についてもっと知りたい、自分で調べたいという気持ちにさせてあげることも飼育員の仕事です。
「動物園では牛肉と鶏の頭だよ。でも野生では違うものを食べてるよ。何だと思う?」と興味のきっかけを作ってあげればよかったのです。
<どうしてサルの顔は赤いの?> <ゾウの鼻が長いのはなぜ?>
「研究」という言葉の意は「研ぎ澄まし、究めること」。ある特定のことについて徹底的に自分で調べあげるという事です。分からない事は人に聞きなさい、とご両親や学校の先生はおっしゃっているのかもしれません。けれど実は教えられた知識は間違っていた・・・なんてこともあるんですよ。最後に頼れるのはやっぱり自分自身です。
<動物園にも資料館があります> <飼育員手作りの掲示物もごらんください>
長い夏休み。友達と一緒に動物園に行って実際の動物を観察することができます。
図書館に行って興味のある事を徹底的に調べることもできます。
もし、それでも分からない事があればぜひ飼育員にきいてみて下さい。
私を含め、みんな喜んで自由研究のお手伝いをいたします。
(飼育員 宿題はイツモギリギリイノウエ)