2020年11月12日にアカカンガルーのサンクが出産しました。
その日は朝からいつもと様子が違っていて外に出た後しきりに陰部からお腹にかけて舐める行動が見られました。
カンガルーの出産を今まで見たことは無かったのですが、目の見えない赤ちゃんのために育児嚢(袋)の入り口まで進めるよう母親が舐めて道を作ってあげるそうです。知識としては知っていたので「あ、これは産まれるんだ」と思い撮影開始。
赤ちゃんは残念ながら写真に収められなかったのですが、その日から1週間後に歯の診察のため麻酔をかけたのでその際に育児嚢の中を確認しました。
<生後1週間の赤ちゃん。約2cmです>
いるぅぅぅ!やっぱりあれは出産していたんだ。
2cmほどの小さな小さな赤ちゃんがしっかりと乳首をくわえていました。
赤ちゃんは育児嚢の中にあるおっぱいから母乳をもらって大きくなります。
顔を出すようになるまで約6カ月ほどかかると言われています。
その間無事に育っているかどうか確認できると良いのですが、この頃サンクは歯の治療を続けており抜歯などで何度も捕獲をしていたため人に対して警戒心MAX。
残念ながらとても育児嚢の中を見せてもらえるような関係になれませんでした。
母体にも負担がかかり赤ちゃんも心配なのでできれば捕獲・麻酔はしたくなかったのですが歯の治療をしないとごはんを十分に食べられず母乳も出ません。
今後は育児嚢の中を見られるような馴致をしておこうと反省し、治療はできるだけ短時間で済ませることを意識して行いました。
歯の治療も一段落した頃、目に見えて大きくなるお腹。
そして4か月経つ頃にはもぞもぞと動く様子もよく見られるようになってきました。
そして2021年5月1日に待望の顔がぴょこっと入口から出てきました。
第1印象は「耳、たれてるなあ」。
その日は一瞬だったので写真にも納められなかったのですが、常連のお客さん達が頑張ってくれて後からお写真を頂きました。「袋、動いてるね」「いつ顔を出すのかなあ」と来園者の方も楽しみに待ってくださっていたのがとても嬉しかったです。
カンガルーは哺乳類の中でも特にユニークな繁殖形態を持つ「有袋類」。
魅力は他にもたくさんありますが最大の特徴である育児の様子とそのワクワク感を皆で共有できるのが有袋類担当者の醍醐味かしらと感じる今日この頃です。
これから体が完全に外に出てきた(出袋:「しゅったい」といいます)時に雌雄判別もできるのでその際は皆様にまたご報告します。
これからもアカカンガルーたちをよろしくお願いいたします。
<びよーんと伸びる育児嚢>
(飼育員 お腹に袋欲しいいのうえ)