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staff blogスタッフブログ (井上久美子(旧姓:川添)のブログ)

恋は障害があるほど燃え上がる

2017年6月17日

「肉食系」という言葉が流行りだしたのは何年前からでしょうか。狩りをする、肉をがっついて食べるというイメージから狙った異性に対して猛アプローチする方の事をそのようにいう風潮があります。

特に獲物(気になる異性)をなかなか捕らえることができないとなると肉食系男子&女子の方はますます捕らえようと燃え上がる様子。

それは肉食系・・・というか本家肉食動物も同じです。

肉をセット

朝、展示場に出す前にセットするのは牛肉。これを網目付きのコンテナに入れて

蓋をする

鎖付きのブイで蓋をします。このブイ、鎖もあいまってがっつりコンテナにはまっているので外すには力がいります。

さわにプレゼント

これをトラの「さわ」にプレゼント~!
これ何ですか?肉入ってるけど・・・

教えて

どうやってとるの?いのうえさん教えて(←と、言ってるように見える)

ぺろっ

ぺろっ

ていっ

とれあえず、てい!

ていてい ていてい2

てい、てい!

肉ゲット!

やっとゲット~。

なんと、外に出てから全てゲットするまでに40分かかっています。これは飽きっぽい当園のトラの性格を考えると素晴らしき記録です。

「なんですぐに食べさせてあげないの?かわいそう!」と思われるかもしれませんが、これには野生のトラの生活が少し関係しています。

肉ゲット2
   <狩り気分はあるかな?>

野生のトラはごはんをゲットするために何kmも歩いたり、何回も狩りに失敗したりと試練だらけの日々を過ごしています。

一方、動物園の猛獣たちはそんな事はせずとも毎日飼育員がごはんをくれます。
やろうと思えば毎日楽におなか一杯にすることはできるのですが、動物園という限られた環境の中でそれをやってしまうと刺激も少なく単調な毎日になってしまいます。彼らが持っている立派な牙や爪は狩りで獲物を捕らえるためについているものです。

本来ならそれを生かすために生きた動物を与えて「狩り行動」を引き出してやれると良いのですが残念ながらそれを動物園で日々行うことはできません。
そこで似た行動を少しでも引き出せるような工夫を現在考えながら模索中です。

適度な運動にもなりますからね~。

ライオン
  <少し遠巻きに眺める・・・>

ライオンにもやってみました。どうやら肉が網の隙間から見えているのに食べられないというところが、彼らを燃え上がらせるポイントのようです。

とれそでとれない

とれそでとれないー

肉の周りをうろうろ
       <うーん>

周りをウロウロして、あきらめて、またウロウロして、を繰り返します。ライオンは残念ながらこれが繰り返され肉を食べる瞬間をとらえることができませんでしたが、昼間にのぞくと無事に食べることができたようでした。

ブイのその後

コンテナ×ブイは強い衝撃でひっくり返せば肉をとることができます。食べた後もしばらく楽しんでいたようで・・・

結果ブイはこうなりました。牙と爪の痕がすごい・・・。

トラとかご トラとかご2

プラかごに棒を挿したものも反応良好。
毎日やると飽きてしまうので時々やってます。朝一番が多いので運が良ければ見られますよー。

恋は障害があるほど燃え上がるといいますが、お肉に恋するかみねの猛獣たちが夢中になるような疑似狩りライフはまだまだ改良の余地ありです。
 

(飼育員 焼肉行きたいいのうえ)

2017年6月17日

ありがとうございました。

2017年6月5日

 以前からお伝えしている通り、5月12日カバの「バシャン」が亡くなりました。54歳でした。

3月12日誕生日会 皮膚炎治療
 <誕生日ケーキを食べたいけど上がれず>      <皮膚炎の治療中>

バシャンは今年の2月から元々悪くしていた関節炎がさらに痛むようで歩くのもゆっくり。プールの昇り降りもやっとのことでした。皮膚もひび割れがひどく薬を塗る毎日。

昨年も同様の症状が出ていましたが5月ごろから回復して初夏には外に出ていたので今年も回復するだろうと思っていたのですが、なかなか良くなりませんでした。

 おからを食べる
<亡くなる2日前。なんとかおからを食べてくれました>

それでも食欲はあったので安心していたのですが、5月7日よりエサをあまり食べなくなりました。

以前より食べづらそうにしてる様子は見られたので草を切ったり、固形飼料を水でふやかしたりして与えてましたが亡くなる前はあまり嚙まなくてすむおからだけを食べていました。

全く口を開けて食べてくれなくなったバシャンに抗生物質を与えようと様子を見に行くと、それまで息継ぎをするためだけに水面から顔を出していたバシャンがなぜかその時だけ階段に足をかけてぐっと顔を出してくれました。注射器に入っている薬を注入したかったのですが、そのまましばらくするとまた水に潜ってしまい、それが私がみた最後の姿です。

なかよくあーん
<2頭でおやつをおねだり。左がバシャン>

2012年に動物園の飼育員になって初めてバシャンに会ったとき、よく食べて穏やかな性格だなあと思いました。自分の子供が小さなときは飼育員に向かってくるような荒々しい一面もあったようですが、20年に渡る末娘との2頭暮らしの間に年を取りすっかり丸くなったようです。

葉っぱのおやつをおねだりするバシャン

葉っぱのおやつが好き

おからケーキ

誕生日の特別なおからケーキは大好き。

落ち葉サルベージ

プール底の落葉をすくって食べる落葉サルベージも見せてくれました。

もたれて眠る

冬季、陸でひなたぼっこするときはチャポンにもたれかかって眠っていました。

トレーニング

冬は外に出ず一頭で過ごす時間が増えたので、棒の先にタッチしたらおやつをもらうというゲームを一緒にやりました。暇つぶしになったでしょうか。

バシャン
   <2016年10月のプールで>

54年の生涯の中で私が彼女に関わったのはたった5年ですが、飼育員として彼女の飼育に携われたことに感謝の気持ちしかありません。

もしも話すことができるなら「かみねでの暮らしは幸せでしたか?」と聞いてみたいです。・・・いや、文句ばかり出るかな(苦笑)

献花 献花ケーキ
  <献花台にはたくさんの贈り物>    <おからに生前好きだった葉を挿しました>

お別れ会には多くの方が献花に来てくれました。
自分が小さいときからいたカバはバシャンだったんですね、と言ってくださる大人の方が多くいらっしゃって世代を超えて皆さんに愛して頂いたのだと実感しました。

バシャンは亡くなった後、獣医さんに解剖してもらって現在病理検査中です。(詳細分かり次第お知らせします)

カバは寿命が45~50年と言われていて長生きする動物です。全国に約50頭ほどいるカバたちも高齢化がすすみ、晩年のバシャンと同じような症状の個体もいるかもしれません。

私が今まで見てきたことや経験したことは今後のカバ飼育、ひいては多くの動物園動物たちの飼育に役立てられることです。いつまでも寂しがってる場合ではないようです。

チャポンがもぐもぐ 
<献葉(?)ケーキはチャポンがもぐもぐ>
現在かみねのカバはチャポン一頭です。また新たな個体がやってくるのかとよく聞かれますが今のところ予定は全く立っていません。

カバ担当の飼育員として私が最も考えなければならないことはいかにチャポンを幸せにしてあげられるか。それを考えて行動していこうと思います。

 

全国のカバたちの命をつないでくれたバシャン、本当にお疲れさまでした。

ゆっくり休んでください。ありがとう。

 

(飼育員 カバ担当いのうえ)

2017年6月5日