ペンギンたちが新居のペンギン村に引っ越ししたのが12年前の3月2日。
もともとアザラシがいたプールの改修目的で、白羽の矢がささったのが、少し手狭感のあったペンギン舎。改修にあたり、当園のウリでもある「間近で見る」をテーマに、「なるべく低予算でね~」という条件のもといざ設計。
(もとのアザラシプール) (アザラシがいたころ)
(旧ペンギン舎) (こじんまりとしたプール)
実際に手を伸ばし動物との距離感を測ったり、取り外し可能な窓をつけたり、また、プールの水量をおさえるため、かつ広く見せるために水深を浅くしたり、遊び心として職員手作りのオブジェを作成したり。
(オブジェ作り)
こうして完成したペンギン舎に、ペンギンたちを移動させ様子を観察する。ペンギンたちの元気に泳ぐ姿にホッと一息。
さぁ、たくさんのお客さんに見てもらおうと思った矢先の3月11日。
日立市でも震度6強を観測した東日本大震災の発生。その日が公休日だった自分は「動物園つぶれちゃったかな?」と思いながら動物園に車で向かった。車内から旧ペンギン舎を見上げると壁が傾いていた。「やばい」と思いながらも、道中にある実家によって親の無事を確認してから動物園に到着した。園内に入り、余震の揺れに興奮しているゾウたちを脇目に、旧ペンギン舎へ。壁は自力で立ってはいたが、余震の揺れで徐々に倒壊していく。幸いペンギンたちは、一足先に新ペンギン舎に移動していたので難を逃れた。とりあえず、国道の方に壁が倒れないように応急処置を施し、大事には至らなかった。
(国道に傾く壁) (壁の補強作業)
(余震で内側に倒れた壁) (補強完了)
次にゾウたちの収容を試みる。停電で動かなくなった重い自動ドアを手で開け、興奮冷めやらぬゾウたちの間に割って入り、なんとか無事に収容し一安心。
園内の状況は、旧ペンギン舎と小獣舎の被害は大きかったが,その他は比較的大丈夫そうだということで二安心。改めて動物舎は頑丈に造られているんだなと感じた。
(小獣舎) (小獣舎内部の亀裂)
この地震で物流が止まり、動物たちの飼料調達が困難なときに、他園館様からの支援物資の寄贈、また、多くの皆様からの義援金により、小獣舎の再建ができたこと、本当にありがとうございました。「天災は忘れたころにやってくる」といいますが、この経験は一生忘れることはないでしょう。
(各園館から送られた飼料) (新小獣舎カピ・バラエティハウス)
(応援メッセージ)
あれから12年、現在5羽いるペンギンたちの中で、あの地震を経験したのは2羽のみ。飼育員もまた、若い人が増え地震経験者が減りつつある。そのため園内では、定期的な脱走動物捕獲訓練や火災時の避難訓練を実施して、いざというときに備えている。
「備えあれば憂いなし」
この先も楽しくて安全な動物園を目指し、みなさまのお越しをお待ちしています。
(定年延長でこの先12年の飼育員 おおうち)