マンドリル、ケンシロウの近況
以前ホームページでお知らせしたとおり、現在、状態不良に伴いマンドリルのケンシロウ(♂)の展示を見合わせております。下半身が動かない状態は今も変わりませんが、食欲は徐々に回復しており、上半身も以前より動かせるようになってきました。直接様子を見ていただくことはまだ出来ませんが、代わりにブログにて経過や現状をお伝えしたいと思います。
<経緯>
8月5日朝、運動場へ移動する様子を見ていると、後肢が思うように動かず、やっとのことで止まり木へ移動するというような状態でした。もともと右後肢の関節炎が原因で6月から足をかばう様子が見られ投薬など処置を続けていましたが、今回はそのとき以上に動きが悪い状態でした。
ケンシロウの状態は日々悪化していき、食欲も低下、好んで食べていたフルーツも手を付けず、徐々に元気がなくなっていくのを感じました。三日後の8月8日には自力で座ることもままならなくなり、その日のうちに寝たきりの状態となりました。
レントゲン検査や血液検査など自園でできる検査を行ってみたものの、原因の特定には至りませんでした。しかし、寝たきりとなったケンシロウには多くのケアが必要であり、まずは今できること(環境をきれいに保つこと、餌をしっかり食べてもらうこと、床ずれができないよう体位変換を行うこと)に取り組むこととしました。
<寝たきりになってからの様子、対応>
顔や前肢を動かすことは出来ましたが、下半身は感覚が無いようで、刺激にも反応がなく、全く動かない状態でした。もちろん寝返りも打てず、このままでは床ずれが出来てしまうためこまめに体位を変える必要がありました。また、前肢を動かすのにも不自由さがみられ自力で餌がつかめないことから、口まで餌を運び食べるよう促したり、必要に応じて補液を行いました。
寝たきりとなって4日後、すでに床ずれになりかけている部分があり、体位変換を日中だけでなく夜まで実施、さらに、床ずれ防止マットを敷いて様子をみました。
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【左:床ずれ初期/右:床ずれ進行】
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【床ずれ防止用のマットに変更、体位変換の回数も増やしたこともあり、床ずれの進行が緩やかになりました】
床ずれの進行は少しずつ遅れてはいましたが、食欲低下や動けないことが原因で、見る見るうちに体は痩せていきました。特に下半身は骨がやや浮き出るまでに痩せてしまい、その部分により圧がかかることで一気に床ずれが進行し、8月末には皮膚がむけた状態となりました。これ以上の悪化を防ぐため、この日から24時間体制で体位変換を行いました。体の角度にも気をつけ体位変換を継続したところ、幸いなことに症状の悪化は食い止めることができています。また、お尻だけでなく尻だこにも床ずれが見られたり胸にも炎症が見られたため、並行して洗浄・消毒などを行い、9月末の段階であと少しで完治というところまで来ています。また、採食についても徐々に回復しており、8月中旬には自力でエサを掴み食べることができるようになっています。

【自力で食べることも出来るようになり、食欲も日々回復しています。】
【上半身が動くようになってきたので、座る練習が出来るよう手すりを設置しました。】
<詳細な検査の実施>
下半身麻痺の症状から脳や脊髄に何らかの異常があるのではないかと考えていましたが、詳細な検査を実施したところ、脳や脊髄に目立った異常は見られませんでした。しかし、腰椎の関節炎がひどく、そこからの炎症の波及が今回の原因としてあげられました。現在はその症状に合わせた投薬を行い、症状の改善が見られないか経過を観察しています。

【投薬の様子、9月末には起き上がることもできるようになりました。】
<今の様子>
10月に入りましたが、まだ下半身の状態に変化は見られません。しかし、食欲は順調に回復し、上半身はよく動きが見られ、ときには腕の力だけで体を起こすこともあります。来園者のみなさまからは「ケンシロウの様子はどう?」「元気になった?」「ケンシロウ頑張って!」など、たくさんのお言葉を頂き、改めてケンシロウの存在の大きさを感じているところです。今後、どのように状態が変化していくは分かりませんが、ケンシロウの回復に向け、職員一丸となって頑張ります。

【久々に座ることのできたケンシロウ。引き続き、温かく見守っていただけますと幸いです。】
(サルの楽園担当:木村カ)