園長への手紙
ある日のこと、園長に声をかけられ「園長への質問にクマに関する質問があったんだけど、担当者から答えてもらった方がいいよね?」とお話があり、1枚の紙をもらいました。
園内にある動物資料館には【園長への手紙】というコーナーがあり、日々来園者の皆様が記入した質問や感想に1つずつお答えしています。
いつもたくさんの質問に返信を書いている園長。
たくさんの返信をするのはすごいな~と思っていたのですが、今回はそんな園長直々にお話をいただきましたので、代わりに担当者の自分がご質問にお答えさせていただきます!
そのご質問お答えします!
今回いただいたご質問の内容がこちら。

(赤部分は個人情報なので塗りつぶさせてもらいました。)
まず内容を細かく分けさせていただくと、
(1)ツキノワグマ、ヒグマの飼育方法の違い。
(2)エサ (3)気温 (4)環境エンリッチメント 等で工夫していることの4つに分けてお答えしていきます。
まず(1)ツキノワグマ、ヒグマの飼育方法の違い。についてです。
飼育方法に特に違いはありませんが、ツキノワグマに比べヒグマの方が体も大きく、力も強いので何か新しいものを設置する際には同じものでもヒグマの方が耐久性などに気をつけています。
また当園のヒグマは2頭とも雌なのに対し、ツキノワグマは雌雄で飼育しています。
数年前にはナオ♂、べべ♀の繁殖を試み同居をしてみたのですが、妊娠出産まではいたらず、べべはツキノワグマとしては現在23歳と高齢となったため、繁殖の計画はありません。そのためヒグマは外の展示場に2頭一緒にいるのに対し、ツキノワグマは基本的に午前ナオ、午後べべと分けて外に出ています。
ちなみに本来クマは繁殖期以外は単独で行動する動物であり、オトナのクマが一緒に行動することはまずないのですが、ヒグマのアイ・エリコは北海道の動物園で生まれて以来、ずっと同じ場所・環境・同居などの条件で生活しているため2頭で同居できています。
次に(2)エサについてです。
毎日のエサの内容は同じものをあげていますが、前述したようにようにヒグマの方が体が大きいため量が少し多めです。
また、野生下では季節により採食量に変化があるため、2種ともに季節に合わせて当園でも季節に合わせ量を多少増減しています。
毎日のエサではないのですが、季節によって採れる木の新芽や果実などもあげています。
園内で採れる柿やカシの木の新芽、桑の葉や実、公園内に生えているジューンベリーなど、かみね動物園、公園内には自然の恵みがいっぱいです!
動物たちも同じエサだけではなく日本の四季に合わせたものは好きらしくよく食べてくれます。

【園内で採れた桜の枝葉、実もついてます。】 【水で溶かした蜂蜜にリンゴをいれ凍らせたもの。】
次に(3)気温について。
2種共に日本に生息しているクマで、寒さには比較的強いため冬場は特別気をつけていることはありません。(それでも0度を下回るような日にはヒーターを入れます。)
逆に夏場の暑さは苦手なため、日中から水をまいたり、上記の凍らせた果物をあげたり、夜間は扇風機をかけたりと、体温を下げる工夫をしています。
最後の(4)環境エンリッチメントについて。
環境エンリッチメントについては様々なことを行っています。
環境エンリッチメントと一括りにすると、とても難しいのですが来園者の皆様から分かりやすいのは採食時間の延長や、行動の多様化を図ったフィーダーの設置などを行っています。
また3月の終わり頃に展示場にオオムギとイタリアンライグラスという種をまいたりもしました。
新芽が出てきた5月のはじめ頃にはツキノワグマ・ヒグマともによく食べていたのですが、すぐに食べ尽くしてしまったり、土を掘り返したことで現在はほんの少ししか残っていません…
クマは体も大きい上に力が強く、賢く、なおかつ木などにも登れるため展示場に何か設置したりする際にも、壊されないか?脱柵に繋がらないか?危なくないか?など、考えることが多くエンリッチメントに非常に気をつけています。

【ヘイボールで遊ぶナオ】 【分かりにくいですが、種をまいた展示場】
答えになっていますか?
と、ご質問に回答させてもらいましたが、どうでしたでしょうか?
園長への質問は実は飼育員も回覧しており、来園していただいた皆様のご感想をダイレクトに聞くことができて毎回密かな楽しみにしています。
かみね動物園はとても大きい動物園ではありませんが、こういったアットホームなところが売りだと個人的に思っています。
動物園に来園された際にはぜひ飼育員に質問などしてみてください!
ちなみに当たり前ではありますが、自分はクマのすみかの近くにいる事が多いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

【仲良くお昼寝中のアイ・エリコ】
(質問された方はホッキョクグマがお好きのようですが、自分はクマはどの種でも好きです。 やました)