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staff blogスタッフブログ (スタッフブログ)

偉大なる母

2022年5月29日

5月は母の日ということで、かみね動物園にいた偉大なる母について書いてみようと思います。久しぶりに書くブログの話題が、なぜか前担当動物ということはあまりに気にせずに読んでもらえればと思います。

さて、5月13日にカピバラのメス「ハナ」が10歳で亡くなりました。ハナが来園してから10年近く(後半3年くらいは担当ではなくなりましたが)見続けてきましたが、彼女はかみね動物園のカピバラファミリーを築き上げた偉大なる母でした。そんなカピバラの「ハナ」のお話しです。

かぴばら

     <カピバラのハナ>

私がかみね動物園に勤めはじめて2年目の2012年にカピバラの担当になったと時を同じくしてかみね動物園にやってきたのがメスの「ハナ」でした。園長と一緒に那須どうぶつ王国までお迎えに行ったのですが、はじめて見たハナは部屋の隅でブルブル震えていて人間に対して全く心を許していないといった印象でした。向こうの担当者からの引継ぎでもオランダの動物園からやってきたが全然馴れてくれないとの話を聞き、大丈夫かなと少し心配しながら帰ったのを覚えています。ちなみにまだ名前がついていなかったので、お花の国オランダから来たということで「ハナ」と命名しました!

かぴばら

<写真を漁っているうちにずいぶん茶色いカピバラだなと驚いたのを思い出しました>

当時動物園には少し前に埼玉県の動物園から来ていたオスの「コタツ」がいましたが、こちらは環境が変わってものんびりマイペースに過ごしていました。このブルっているハナとマイペースなコタツをどうやって一緒にしようかなと考えましたが、とりあえず会わなきゃ相性もなにもわからないということで一緒にしたところ、2頭はぴったりと寄り添ってハナも心なしか仲間ができたことで落ち着いている様子でした。その後はコタツの大らかな性格も安心の材料になったのか、最初は心を許していなかったハナも徐々に人や環境に慣れていきました。

かぴばら

<懐かしの出勤風景!カピバラも人も若いなぁ・・・>

そんなこんなで過ごしていた2013年に待望の赤ちゃんが生まれました!かみね動物園史上初のカピバラの繁殖でした。生まれた時の超貴重映像がこちら!!!

https://www.youtube.com/watch?v=2PVH8T3Y-xg&t=1s  QR 

(上のURLかQRコードからご覧いただけます)


カピバラに限らず動物は赤ちゃんを産むと神経質になったり、攻撃的になったりするということは珍しくありません。カピバラも例外ではなく、自身の赤ちゃんを殺したり食べてしまったりする事もあります。ましてや超神経質なハナだったので、母子を刺激しないように慎重に飼育を行っていましたが、心配をよそに初産にも関わらず落ち着いた様子でした。しばらく赤ちゃんは外の展示場には出せないので母子は部屋、父は外というように展示していましたが、ある日ハナにちょっと外を見せたところ子どもを置いたままダッシュで外に飛び出していきました。子どもは任せたと言わんばかりに飛び出していった背中を見送りながら、あの神経質で臆病だったカピバラと同じなのかと驚いたことを覚えています。どっしりと構え、私たちが子どもに触れても特に気にすることもなかったので、体重測定や治療など赤ちゃんのケアができたことはありがたかったです。

かぴばら カピバラ

  <出産直後の写真。手前がハナ>     <開脚してしまった赤ちゃんの治療>

そこからは毎年赤ちゃんが産まれ、34頭もの子宝に恵まれました。カピバラの平均出産数は2~4頭と言われていますが、ハナは初産こそ4頭だったものの、2回目の繁殖では6頭を出産し全頭を育て上げたり、2014年には7頭出産という当時の国内最多出産数(調べた限りでは)を記録するなど超多産な母でした!子育てはというと前述のエピソードのように良い意味手抜きをしていました。子どもの遊び相手は父や上の子に任せることが多く、授乳と子供のピンチ以外は自分のペースで過ごしていることが多かったです。だからこそ、これだけ多くの子どもたちを育てられたというのもあると思います。

カピバラ かぴばら

 <そんなことよりも眠いといった感じ>        <親子で水遊び> 

かぴばら かぴばら

      <母は大人気>            <カピバラ団子!左がハナ>

また、赤ちゃんが生まれてからは群れの中で絶対的な存在となり、食事も休息も一番良い場所で取るようになりました。オスのコタツが優しかったということも大いにありますが、群れの中で最強、いや最恐のお母さんでした!母が歩くと道が開ける様はまさにモーセが海を割るといった感じでした(笑)そんな最恐の母も一番下の子どもにはとてもやさしく、兄姉たちにご飯を取られることなく母の近くで安心して食事をとることができたのもすくすく成長できる一因だったと思います。また、ハナ自身も母乳をたくさんの子どもに与えなければならないので、誰よりもエサを必要としていたことは間違いありません。そんな厳しい母でしたが子どもたちからは信頼される存在でした。

かぴばら かぴばら
    <授乳は争奪戦です!>           <母の隣は大人気!>

晩年は体が衰えて子供たちの方が力が強くなったにも関わらず、亡くなる日まで母と子の関係性は変わりませんでした。あの部屋の隅でブルブル震えていたカピバラが、たくさんの子どもを産み、育て、そして強く、優しい偉大な母になっていく様子を近くで見られたことはとても貴重な経験となりました。私は動物に人間の都合やストーリーを当てはめて話しをすることに少し抵抗がありますが、彼女の偉大さをみなさんにお伝えする最後のチャンスだと思い担当でもありませんががっつり主観で書きました!動物園の動物には一頭一頭に物語があります。それを味わうのもまた動物園のひとつの楽しみ方かもしれません。

(那須まで長距離は怖いからと言って終始園長に運転させていたのを思い出した 中本)

かぴばら

<ありがとうハナ!ゆっくり休んでね。>

2022年5月29日

くさい?動物のにおい

2022年5月20日

動物のにおい

動物園に来て、「くさい!」「意外とにおいがしないな~」と思った経験はありますか?
もしくは、「今までにおいなんて気にしたことなかった…。」という方もいらっしゃるかもしれません。
例えば「草食動物のにおい」。といってもゾウやキリンなどの大型の動物から、ウサギやモルモットといった小型の動物まで存在します。そしてその「におい」もまた違ってきます。


クロサイが寝ている

クロサイはクロサイ自身から強いにおいがするわけではないですが、便をすると、「お、今排便したんだな」というにおいがあたりに広がります。自分の縄張りを主張するのに、出した便を蹴り散らかすので、さらにそのにおいも広がるのでしょう。


以前別の動物園でクロサイを近くに飼育していた私にとっては、知り合いのいない日立に来て働き始めた時にホッとする香りでした(笑) また、雨に濡れると、しっとりした肌から水分が蒸発する蒸しっとしたにおいもします。

ポニーたち

サイと同じ草食動物、同じ奇蹄目(蹄が奇数の動物種:サイ科・ウマ科・バク科のみ)でも、ポニーはまた違ったにおいがします。


展示場周りはいわゆる牧場のにおい、とでもいうのでしょうか。家畜ならではの香りがし、目をつぶるとまるで牧場にいるような気分を味わえます。そして面白いのが、同じ環境で同じ牧草を食べているのに個体によってにおいが違うこと。年齢差なのか、種差なのか、個体差なのか…。これもまた担当者になって密に接していないと分からないものなのかもしれません。
ポニーのクロ
クロはおひさまの暖かさを吸収しやすい色だからか、晴れている日には干したお布団の香りがします。(個人的感想)

ヤクシカが葉っぱを食べている様子

こちらは偶蹄目ですが、同じぐらいの大きさでいうとシカも草食動物の一種です。
かみね動物園のシカはポニーと食べているものはほぼ変わりませんが、シカからは野性味あふれるにおいがします。野生でのオスのシカは自分の縄張りを主張するため、自分の尿を泥場にした後、その泥を体に付け、木に擦り付けるなどの行動が見られます。

当園のヤクシカ前は香りスポット。オス3頭だからなのでしょうか。においによる存在のアピールはピカイチです。

くさいって一概に悪いことじゃない

動物のにおい、花や土のにおい、食べ物のにおい。自然界においての「におい」は意外と意味のあるものが多いです。
動物においては種類や食性によって体臭や便のにおいは変わってきます。動物園ではそのにおいが変わったとき、体調が良くないのか?というバロメーターになることもあるのです。

某動物園では、「園内のにおいをなんとかしてほしい」との意見が入ったこともあるようで、その意見に対するその動物園の園長のお返事が素敵だなと思った記憶があります。

かみね動物園でも、動物園内を歩いていると、「くさーい!」「くさいから嫌!早く行こう!」という言葉が聞こえてきます。くさかろうと、いいかおりであろうと、においが気になった時、その時こそ「本物の動物を感じるチャンス!」
なんでそんなにおいがするんだろう?そのにおいは何の意味があるんだろう、もしくはなんの意味もないのかもしれない…なんて考えてみてください。動物の新たな一面に気付けるかもしれません。

すれ違った飼育員から普段嗅ぎなれないにおいがしたら、なんの動物の担当をしているんだろう…と想像してみるのもまた一興。

(飼育員 ところ)

2022年5月20日

チンパンジーのリョウマ君10歳のお誕生日会

2022年5月5日

4月27日にチンパンジーのリョウマ君が10歳のお誕生日をむかえました!

リョウマ君

リョウマ君

4月24日に少し早めのお誕生日会を開催しました。

1歳のころからお誕生日会を行っているため今回で記念すべき10回目。

プレゼントはパイナップルとメロンの中身をくりぬき、イチゴ、ブドウ、ミニトマトを詰め込んだものと、段ボールにナッツの入ったコングとタケノコをいれました。

プレゼント

走ってやってきたリョウマ君は一緒にお祝いをしてくれた沢山の方々にかっこいい所をお見せしたかったのか、ディスプレイ(自分はかっこいいんだぞとアピールする誇示行動)と共に段ボールとプレゼントをひっくり返してくれました…

ディスプレイするリョウマ ディスプレイするリョウマ

プレゼントを蹴散らすリョウマ君

食べてはディスプレイを繰り返していましたが、美味しいものはしっかり食べられた様子でした。

リョウマ君 パイナップルを持つリョウマ君

両手にプレゼント

続いて出てきたお母さんのマツコも色々ゲットしていました。

マツコ

マツコの誕生日かと思うほど沢山確保

10歳というとちょうど思春期真っ只中。難しいお年頃ですが、ディスプレイをして自分をアピールしたい時、ゴヒチお父さんやリーダーのユウに怒られてしょんぼりしている時、お母さんのマツコに甘えている時、など見ていてとても分かりやすいので、まだまだ可愛いなと思っています。

リョウマとマツコ リョウマとマツコ

マツコお母さんには今でも甘えています

それでも力はとても強くなってきたので、将来のリーダーにむけてゴヒチやユウの良いところをしっかり学んでいってほしいなと思っています。

リョウマ君

(チンパンジー担当 おおぐり)

2022年5月5日