すごいぜ!ビーバー!
ネズミ目総選挙 まさかの結果
今年3月に行われたネズミ目総選挙。私はビーバーの応援チームのメンバーになりました。
上位を狙える魅力あふれる種類なことと、たまたまビーバーの飼育担当(当時)でもあり、気合十分で選挙活動に挑みました。
選挙ポスター
ちなみにビーバー以外のエントリー種は、ヤマアラシ、マーラ、プレーリードッグ、カピバラ、アカリス、モルモットでした。
応援動画を作成、配信もして、果報を待ちました。
結果は、まさかの最下位…信じられない思いと魅力を伝えきれなかった無念さが3カ月ほど経った今でもあります。
そこで、あらためてビーバーのことを紹介したいと思います。
ビーバーの身体の特徴
ビーバーは、ヨーロッパやユーラシア大陸北西部に生息するヨーロッパビーバーと北極圏からメキシコ北部までの北米大陸に広く分布しているアメリカビーバーの2種類がいます。
かみね動物園で飼育展示しているのはアメリカビーバーです。
ビーバーを漢字で書くと「海狸」。海に住んでいるわけでもないのに、水の中が得意でタヌキに似ているからなのでしょうけど、うーん…。
ビーバーは足が短く、ずんぐりむっくりの体型をしていて、ネズミの仲間のなかではカピバラに次いで二番目の大きさです。
体長は70~90センチメートル(尻尾を入れると130センチメートル位)、体重はタヌキの4~5倍で30kg近く(最大で)にもなります。意外に相当デカいです。
ビーバーの身体には水の中で生活するのに便利な特徴がいっぱいです。
(1) 後ろ足には水かきがついています。
(2) ウチワのような平べったい尻尾で舵をきり、水中をスイスイと軽やかに泳ぐことができます。
(3) 目にはゴーグルの役割の瞬膜という透明な膜があります。
(4) 水の中に15分間位潜っていられます。
(5) 体毛は密で撥水、保温性に優れています。
すごいんです!ハイスペック!陸上よりも水の中の方が断然イキイキ活発に動き回ります。
ダムづくり
また、有名なビーバーのダムづくりですが、あれは親から教わるのではなく、生まれつきの本能による行動のようです。
水の流れる音を聞くと、その音をできるだけ小さくしようとして、川をせき止める行動をするといわれています。
長さや太さが様々な枝や土、石などを巧妙に組んで複雑な巣を造り、流れをせき止めダム化してしまいます。
川をせき止めて造られた巣 野生のビーバー
※当園の女性スタッフがカナダで撮影してきた写真です。普通によく見られるそうです。
水中からのみ出入りができる構造になっていて、オオカミやコヨーテなどの天敵から身を守り、食料の備蓄もしながら安心安全な暮らしを自ら設計しています。
人間以外では、自分の生活のために周辺の環境を作り替える唯一の動物といわれています。動物界の一級建築家とも呼ばれています。
本当にすごい!
極上の毛皮
そして、ビーバーのあの茶色い毛、極寒の環境でも耐えられるように密で保温性抜群になっています。
一見ゴワゴワしていて硬そうに見えますが、実はフワフワですごくやわらかいんです。
その下には下毛というさらにやわらかい毛が生えていています。
この毛が過去にはビーバーにとって悲劇のもとになってしまいました。
かつてヨーロッパで、ビーバーの毛を使った高級なフェルトハットが、お金持ちの間で大流行。ヨーロッパビーバーは乱獲によって絶滅の危機に陥ります。
そこで今度はアメリカビーバーがビーバーハットの原料とされることになり、また北米大陸で乱獲。
2億頭いたともいわれる生息数はあっという間に激減、絶滅寸前になってしまいました。
しかし、その後、代わりにシルクハットが登場したことや保護政策がされたことで、生息数は回復して、現在1000~1500万頭が生息しているといわれています。。
※ちなみに、フェルトハットには、ビーバー、ラビット(ウサギ)、ウール(ヒツジ)の3種類があって、ビーバーハットが最高級品らしいです。
人間活動のために窮地に立たされる動物たち
ちょうどビーバー舎に隣接してベンガルトラ、クロサイが暮らしています。トラもクロサイもかつては10万頭いたとされていますが、
毛皮や角、薬効目的で密猟が絶えず、わずか100年ほどの間に95%以上数を減らし絶滅の危機にたたされています。
アメリカビーバーと分布を共有するアメリカバイソンも、かつては北米大陸に6000万頭生息していたといわれていますが、毛皮の商業目的、娯楽のための狩猟、
また先住民たちを支配する目的で乱獲され、あっという間に数百頭にまで激減した過去があります。
人間は、人間が太刀打ちできない体の大きな動物や力の強い動物、優れた身体能力、特殊能力の持ち主に対しても知恵と圧倒的な文明の力を使い、
信じられないスピードで動物たちを絶滅の道に追い込んでしまいます。
今こそ、生き物や自然との関わり方、環境問題を真剣に考える転機になったらと願うばかりです。
魅力満載のビーバー
絶滅の淵からも復活できる逞しさ。水の中での暮らしや極寒の環境にも適応した身体の特徴の数々。川をせき止め、安全な巣を造って身を守る知恵と技術…
知れば知るほどすごい動物なのです。
すごい能力、特徴だけでなく、コツコツ勤勉なところ、温和で堅実な性格というところもビーバーの大きな魅力です。
ビーバーは、一夫一妻制で、子育ては、赤ちゃんたちを両親(お父さんも)、兄弟家族みんなで、協力して、大切に、愛情いっぱい行うそうです。
かみね動物園では、これまでビーバーの繁殖に成功したことがありませんが、
将来、赤ちゃんや育児の様子、家族の姿を見ていただけるよう環境の整備や工夫を行っていく予定でいます。
今後の知名度アップ活動に注目
選挙の投票結果は残念なものでしたが、地元出身おじさんトリオでの応援動画、“ビーバースイスイ音頭”が高評価を得て園長賞を受賞することがでました!
そして、園長のポケットから支援金を頂きました。
ビーバーの暮らしを良くするもの、より能力が引き出るようなもの、ビーバーが喜びそうなものを考えています。
あらためて報告したいと思います。
その後4月に担当替えがあり、現在、新担当者が環境改善、巣作りを促す工夫など、ビーバーイキイキ作戦を行っています。
また、『1いいねにつき、お家の材料になるイイ感じの枝が1本もらえるビーバー』というツイートをしたところ、
3057いいねをもらったので3057本のイイ感じの枝をビーバーにプレゼントをする準備中だそうですので、併せて楽しみにお待ちください。
飼育員やまうち