そろそろ秋物の洋服が恋しくなってきた今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
動物たちにも衣替えがあります。夏毛、冬毛、聞いたことありますか?暑くなる前、寒くなる前、毛が生え変わる動物がいますね。中には全身の色がガラリと変わってしまったり、周りの環境に合わせて模様が変わったりする動物もいます。例えば二ホンジカやオコジョがそうです。
《木漏れ日のような模様の夏毛》 《暗い茶色の冬毛》
《自然に溶け込む茶色》 《雪原に溶け込む白》
かみね動物園にいる鳥の仲間、フンボルトペンギンにも衣替えがあるんです。他の動物と違って、年に1回、暑くなる前の時期にそれは訪れます。
6月下旬頃から、ペンギンたちはたくさんの餌を食べ始めます。牛丼屋さんに例えるなら、普段は並盛、この時期はメガ盛です。
飼育員は驚くこともなく「お、いよいよ来たな」くらいな感じでたくさん食べてもらいます。
それと同時に、ペンギンの体に変化が現れてきます。体の表面が少しずつボロボロになってきます。
《少し背中が荒れてます》
一見、病気かなと思ってしまうような姿ですが、横を通る飼育員たちは何の心配もしていないようです。飼育員ひどいなと思わないでくださいね。
次第にボロボロ具合がひどくなってきたころ、ペンギンたちの腹囲はメタボ並みに拡がります。そりゃたくさん食べれば、太るのは当たり前です。
《だいぶ背中が荒れて、ちょっと太った》
この「太る」というのは、言い方を変えれば「蓄える」ことになります。
ある程度「毛」が抜けて、といっても鳥ですから「羽毛」が抜けてしまうと、水に入らなくなります。
《地面に抜け落ちたペンギンの羽》
普段は生えそろった羽毛で皮膚まで水が入らないようになっていますが、この状態だと体が浸水してしまいます。また、つるんとした体でないと水の抵抗を受けて泳ぐのが大変です。
《ちょっとみすぼらしい姿に》
この水に入らない期間は、1週間から10日くらい続きます。水に入らない=食べ物の魚を取ることができない。しばらく食べなくても大丈夫なように、餌をたくさん食べて「蓄えて」いたのです。
お腹も引き締まり、そろそろ腹も減ったし、いよいよ入水です。
《腹減った》
生えたての羽毛は、それはそれはきれいなもので、撥水効果も抜群です。
《背中の撥水具合、わかりますか?》
そしていつもの生活に戻ります。
《左が換羽前、右が換羽後、白さを見比べてください》
換羽(羽が生え変わることをこう言います)の時期は、ペンギンの食欲がいつも以上に不安定になり、もぐもぐタイムが開催できなかったりとみなさんをがっかりさせることもありますが、こんなことが起きていたのですね。
こんな様子を見られるのは、6月から7月の間です。いつもと違ったペンギンをまた見に来てくださいね。
(白髪が増えたしいくいん たかはら)