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staff blogスタッフブログ (スタッフブログ)

3.11とライオン

2018年3月28日

3月16日はライオン「きぼう」の7歳の誕生日。
きぼうは2011年3月11日に発生した東日本大震災の5日後に誕生しました。
当園は被災した獣舎の修繕や市民の対応に追われて臨時休園している中での出来事でした。

支援物資届く ひびが入った獣舎
  <各園館から届いた支援物資>          <ひびの入った獣舎>

きぼうゆめはる
  <きぼう、ゆめ、はる の3頭>

2頭のメスと共に元気いっぱいうまれてきたきぼうは母ライオンバルミーの深い愛情を受けて元気に成長。可愛らしい姿を皆さんにも見て頂きたいと考えた園長や当時の職員たちは3月下旬の開園に合わせて公開&抱っこ体験をしようと企画しました。

集まる人々 抱っこ会の様子

ご覧の通りの大盛況!震災の影響で自宅が壊れたり、水が止まったり、原発事故が発生したりと誰もが不安を抱える中で生まれてきたライオンの子供たちは多くの市民を笑顔にしてくれたようです。

 ~ようです、と書いたのはライオン担当である私がその頃まだかみね動物園にいなかったから。
地震が発生したとき私は横浜で働いていました。ぐらぐらっと大きな揺れを感じたときとっさに机の下に隠れましたが誰かが「外に出ろ!」と叫んでいるのが聞こえました。
でも揺れが大きくて恐くて体が動かず結局ずっと机の下に隠れていました。
その後、電車通勤の同僚たちは公共交通機関が完全に麻痺して帰れず車通勤の私が近くまで送ることに。
いつもなら20分程度で到着する横浜駅は道路の大混雑で1時間かかり駅周辺は毛布をかぶってうずくまる人やタクシー待ちの行列で騒然としていました。

それから5時間近くかけて自宅に到着。道中お腹が空いて寄ったコンビニにはかろうじてパンが2~3個残っており、後輩と二人でかじりながら車内テレビで見た東北地方の光景は今でも目に焼き付いています。
被害が深刻な地域に比べたら大したこと無いと思います。けれどもこれが私の震災体験です。

 誕生日会に集まった人々

3月17日に行ったきぼうの誕生日会には多くのお客様が来てくださいました。
その中には当時きぼうを抱っこしたという方もたくさん!

キボウ カボチャの中の丸鶏を食べる
     <箱の中に肉ある?>      <カボチャの中の丸鶏を取り出して食べる!>

抱っこなんてとっくにできなくなっているし、時には他のメスを蹴散らして餌を独り占め!なんて様子もありますが、立派な成長ぶりに目を細めて見てくれる方々が大勢いらっしゃいます。

日々の暮らしであの時の記憶は薄れがちですが、多くの方にご支援頂いた感謝の心や体験したことはかみねで働く飼育員としては語り継いでいかなければならない事なので、今年は震災時に復興支援に携わった職員を呼んでガイド中にお話してもらいました。

体重測定
    <体重測定の様子>

そして愛情いっぱいに育ったきぼうを更に健康に幸せに過ごせるよう飼育管理してゆくのが私の仕事。
きぼうは現在トレーニングにより無麻酔での採血と体重測定が可能となっています。
私が初めてハズバンダリトレーニングを導入して成功した個体です。

www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p045663.html(詳しくはこちらのブログをご覧ください)

今年度は茨城大学、そして先に採血成功していた大牟田市動物園と協力してネコ科動物に必須な栄養素「タウリン」の血液中の量を測定して頂きました。
これにより、給餌内容の改善など動物園という限られた空間でより健康に飼育していくにはどうしたら良いのかという糸口が見えてきました。

詳しくはまたブログで書きますが、これらの成果は協力してくれた各関係者の皆様、そして動物たちのおかげです。

元気なきぼう!

大災害が起こったとき、動物園ができる事は本当に限られています。
それでも1kg程度の赤ちゃんだった「きぼう」は日々成長(今は180kg)して私たちに新たな発見をさせてくれました。
限界を設けず色々な事にチャレンジして進化していける動物園を目指そうと、きぼうの誕生日会で気持ちに喝!を入れました。
きぼう、生まれてきてくれてありがとう。こらからもよろしくお願いします。

 ※ライオン繋がりで・・・きぼうの母親「バルミー」の闘病生活について当園の獣医あきばがブログを書きました。こちらもぜひご覧ください。

www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/akiba/p066436.html 

(飼育員 元ライオン担当いのうえ)

 

2018年3月28日

バルミーの闘病生活~子宮蓄膿症?!~part1

2018年3月20日

すっかり過ぎ去ってしまった昨年のお話。

この場を借りて、ライオン♀バルミーの闘病生活をご報告いたします。

できそこない獣医師の私に、私が一番イライラしますが(笑)、バルミーの頑張りに免じて、お付き合いください。

 

 

昨年の夏のこと・・・

 

「バルミーがご飯食べなくて、元気がないんです…」という飼育員さんからのお話がありました。

 

「んー、夏バテかな?こんな時期に毛球症(※)かな?」と内心思いながら、様子を見に行くと、

 

※なめとった毛玉がおなかの中で塊になって、つまってしまう病気です。処置しないと死んでしまうような病気でもあるんです。ライオンはネコと同じく、この病気の発生が多い(季節の変わり目=ライオンの毛の生え変わりの季節=5月頃と11月頃!)動物なんです。

 ライオンの毛

 動いてはいるけど、確かになんだか覇気がない・・・残すエサの量も多いということで、

対症療法的に投薬開始。

 

 

でも、残念ながらよくなりませんでした・・・

そこで、しっかり検査をするために、全身麻酔をかけることに!

毛球症をはじめとする消化器疾患を想像していた私。

 

レントゲンを実施すると、胃の中に異物が!!!!

「悪さをしているのはこれだ!!!!どんぴしゃじゃん!!!!????」

 

レントゲン撮影

レントゲン写真
 

と考えました。

血液検査でも特に異常もなかったので、やっぱこいつだな~

 

となると、これをとらなきゃいけない・・・つまり、胃を切る手術が必要でした。

簡単に言ってますが、バルミーの体重は当時約110kg。

園内の設備や医療器具、人手を見渡して…「はーい、お腹開きますね~」という気軽な感じでは手術できませんでした。

 

 

じゃー、手術にうつる前に、できることは・・・?

お薬で異物をだすこと!!!ということで、いろいろとお肉に混ぜて投薬。

 

 

でもやっぱり、本調子には戻らない・・・

 

 

園内で作戦会議(1)を実施。

実は、レントゲンって、骨の評価が得意な検査で、内臓を見るならエコー検査のほうが優秀な検査なんです。

でも、かみね動物園にはエコーの機械はありません。

そこで、近くの動物病院さんにお願いしたところ・・・OK!!!

麻酔をかけて検査を行い、本当に胃や腸の中に異物があるのかないのか、一緒に評価してくれることになりました。

 

念のため、レントゲンも再度実施したら…

異物がない?流れた?体位の問題?

胃の中はからっぽでした。

 

エコー検査の結果。


んー、やっぱ消化管内には異常ない。あれ?子宮がちょっとおかしいな・・・なんか液が溜まってる?

 エコー

という所見がみられたため、「あれま、消化管じゃないのかな?」と、ここで方向転換開始。

年齢的にも、妊娠していない期間的にも・・・子宮疾患かも?!

 

 

さらに、確定させたい!ということで、園内で作戦会議(2)を実施。

胃の中に本当に、本当に、ほんとーーーーに、なにもないのか?!ということを確認しようということに。

今度は内視鏡検査を実施してみよう!でも・・・かみね動物園には内視鏡の機械はありません。


そこで、近くの水族館さんにお願いしたところ・・・OK!!!

 内視鏡検査

内視鏡画像


結果、胃の中にはなにもなく、心配していた胃炎や胃潰瘍もありませんでした。

このときの血液検査で白血球が増加していて、発熱もありました。

ここでやっと、細菌感染がある状態、かつ子宮疾患を疑い、さらに陰部に膿が付着しているのを見つけたこともあり…

 

「これ、子宮蓄膿症※じゃねーの?!!!!!」

(子宮の中に膿がたまってしまう病気。子宮破裂による腹膜炎や、敗血症などがおこり、治療しなければ死に至る病気です。)

 

「え、結局、お腹開けなきゃいけないの?」(えー、やだやだと内心思う私。)

 

子宮蓄膿症の治療は、基本的に卵巣子宮全摘出術です。

ホルモン剤や抗生剤を使う治療(下記に詳細あり)もありますが、再発することが多いのです…

 

 

とりあえず、このまま手術はできない。とにかく抗生剤を飲ませて、状態をよくなることを願おう!その間に戦いの準備をすることにしました。

 

 

食欲があるときをみはからないながら、抗生剤を投薬。よく食べてくれました。

本当に、バルミーに感謝しかありません。

 

 

薬が入る量が増えるたびに、症状はよくなっていき、

なんと!!!体調を崩す前の、元通りのバルミーの状態に!

めでたし、めでたし。ここで治療終了~

 

としたいところですが、残念ながら子宮がある限り、再発リスクが高い病気なんですね。

 

 

抗生剤を飲ませている間に、病気について調べ、いろんな獣医さんに聞き込みもしました。

教科書、文献、近くの動物病院さん、大学の同級生、動物園関係の獣医師など・・・

 

ホルモン剤を使った治療法も実施されていることがわかりましたが、

 

*PGF2α・・・私は、子宮破裂の副作用が怖くてやめました(破裂は起こらない、猫だと必要量が多いなど諸説あるようです)。

 

*アリジン・・・お値段が高く、数回の治療をしても再発することもあるという話をきいてやめました(これも諸説あり。一回の使用で治った経験のある先生もいるそうです)。

 

 

いろいろ聞いた&考えた結果、やっぱ根治するには、手術!!

バルミーは10歳。ライオンは約20年生きると言われているので、まだ半分あるし・・・

過去の剖検記録を見ると、かみね動物園で、子宮蓄膿症による子宮破裂で死亡してしまった個体もいたようでした。

私は、「同じことは繰り返したくない。バルミーを助けたい!」の一心でしたが、課題は山積み…

 

 

人手、器具、機械、技術、薬・・・

ネコの手術ならともかく、ライオンで同じ手術をしたことがなかった、かみね獣医~ズ。

わからないことが多くて、不安も多くて、でもやらなくては助けられない…

なんとかならんかね~?と奮闘した日々は、Part2に続く。

 

(結局まわりに甘えてばかりの 獣医師・あきば)

2018年3月20日

とびだせ動物園!ボルネオ編part7

2018年3月9日

ボルネオブログももうすぐクライマックス。
ここで過去ブログのリンク貼っておきます。本当は毎回貼るのが良いんですがなんせ無精者で・・・。

part1
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p064156.html

part2
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p064241.html 
part3
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p064242.html 
part4
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p064698.html
part5
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p064699.html
part6
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/inoue/p065771.html

お時間ありましたらぜひ過去に書いたものも読んでみてください。
ではpart7の始まり始まり~!
 

ドキドキワクワク夜の森

ツアー中、ガイドと一緒にナイトトレッキングも予定されていました。
夜のジャングルではどのような発見があるのか。私たちはとてもワクワクしていました。ヘッドライトをつけていざ出発!

ヘビ

早速出会ったのはヘビ。名前は分からないのですが餌となるカエルを探しているとガイドが教えてくれました。
夜行性で静かに枝葉の上を這っていました。時々首をもたげては餌をさがしているようです。

triangle keel back

ヘビもう1種。「Triangle keelback」こちらもカエルを探しているとのこと。どちらも水辺で発見されました。彼らが動いている周辺では確かにカエルの鳴き声が多く聞こえます。

カブトシロアゴガエル

こちらがそのカエル。「カブトシロアゴガエル」です。ロッジ周辺の池にたくさんいました。夜の間ずっと聞こえる鳴き声大合唱の主です。

ヤスデ

夜の森には怪しげな生き物もたくさん!こちらは昼にもみかけたヤスデ。15~20cmほどの全長でなかなかの大きさ。
夜見るとちょっとぎょっとしますね・・・。

サソリモドキ

サソリモドキの1種。毒はありませんがすごく臭い液を出すそうです。これが皮膚にかかるとものすごく痛痒くなるとか。

ボルネオモリドラゴン

昼行性の動物は夜は休んでいます。こちらボルネオモリドラゴン。
葉の陰でお休み中でした。

動かない青い鳥

これには驚かされました。

この青くて美しい鳥「Malaysian blue fly catcher」。なんと寝ているのです!
こちらの息がかかるくらい近づいても起きる気配無し。

美しい! 

まるで標本。いや、生きているので標本よりも美しいのですが。
ものすごく近づいてライトを照らしてもこの通り。
夜の森ならではの光景です。

オオフクロウ

森を出る最後を見送ってくれたのはオオフクロウ。
日本のフクロウの1.5倍くらいはあります。首を回転させながら周囲を伺っていました。

夜のジャングルは昼間と違い、なんだかすべてが艶めかしい。
未だよく分からない動物たちの生態をさらにミステリアスに見せているようにも感じました。
夜行性の動物が活発な様子を見られた事も昼行性の動物の夜の姿を観察できたのも、この時間でしか体験できないことであり、きっと私たちが昼間見ている動物園の動物たちも夜は全く違う姿を見せているのだと思います。
生き物の事を知りたければあらゆる方面から見つめなければ本当の姿が分からないです。
 

 おまけ

 今回の旅で一眼レフカメラデビューをしました。(と言ってもこの時は妹からの借り物。やっと最近購入しました)
初心者でも上手に撮れるというのが売りのカメラを携えて行ったのでそこそこピントも合わせられたのですがやはり動く動物や夜の撮影には四苦八苦。

ぼやけたクモ 綺麗な鳥
      <ぼやけたクモ>         <手ぶれが激しいですが綺麗な鳥>

このブログに載せている写真は比較的皆さんにお見せできるものですが本当はもっとたくさんの生き物を見ています。でも私の腕がいまいちで紹介できず。
動物の魅力をより伝えられる写真を撮ることができるよう練習します。
目指せ岩合光昭さん!?

(飼育員 いのうえ)

2018年3月9日