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staff blogスタッフブログ (スタッフブログ)

単調でないタンチョウの暮らし~その4~

2017年2月22日

 しばらく空いてしまった単調でないタンチョウの暮らし。
実は年末年始にかけて大失敗をしました。
今回はしょっぱいお話。

タンチョウの部屋
   <タンチョウのいる場所>

当園のタンチョウはお世辞にも広い場所での飼育ができていません。
本来野生下だととても広い範囲を歩き回り、飛んでエサを探すこともします。

しかし動物園では檻の中。
そのせいなのか「常同行動」が多いのが悩みでした。

常同行動

常同行動とは同じことを繰り返したり同じ場所を行ったり来たりする行動の事。

野生下では見られないので動物園動物特有のものです。
原因はストレス、不安、別の欲求を満たすため・・・など色々と言われていますがいずれにしろマイナスなもの。
この行動はできるだけ取り除いてあげるのが動物にとってもHAPPYなのです。
当園のタンチョウは同じところを行ったり来たりする様子が見られました。
狭いながらもできるだけ、タンチョウが餌を探せる楽しみや他に気を紛らわせるものがあれば減るかもと思って始めたのがこれまでの取り組みです。

効を奏したのか、目に見えて常同行動が減ったなあ~と思っていた矢先・・・

マット ペンギン舎
   <来園者用消毒マット>      <野鳥侵入を防ぐための網をはったペンギン舎>

鳥インフルエンザの大流行。
日本中の養鶏場で対応に追われました。
今年は動物園でも発生したため閉園する園館も。皆さんもニュースでご覧になったと思います。
茨城県でも水戸の千波湖で発生して水辺に集まる鳥達がが相次いで死亡しました。
鳥インフルエンザは特に鳥に感染する病気。ウイルスを保有している鳥やその糞と接触すると感染して死に至る危険があります。
かみね動物園には約15種の鳥類がいるので彼らがうつったら大変。
動物園でも対策に追われました。もちろんタンチョウにも。

全景

檻全体に細かい目の網を張りました。
これは金網の隙間をとおってやって来るスズメ対策。

扉のすき間 檻と土台の間
  <人が出入りする扉のすき間>          <檻とコンクリの間>

このスズメ対策が本当に大変!
ほんの少しの隙間をぬって入っては餌を盗み食いするんですよ。
そして出られないという・・・。
それでも全てのすき間を埋め終えて後は中にいるスズメを網で捕まえて追い出すのみ、という時。
大失敗をしてしまいました。 


イメージ図
   <タンチョウの心象イメージ>

ただでさえ、普段は接しない多くの人が檻の周りで何かしてて落ち着きなかった彼ら。
そこで昆虫網を持った人が網を振り回しながら中に入って雀を捕まえようとするのです。
見た事ない光景にタンチョウは大パニック。
怪我をしないよう奥の部屋に追い込んで行ったのですが、その中でパニックを起こして翼も少し怪我をさせてしまいました。

ここまでリスクを負ったのにスズメの方が一枚上手で次の日は別の隙間から入ってるし(泣)

網を切る
  <赤い部分の網をハサミでカット> 

ここでやり方を変えて外から網を切って少ない動きで雀を追い出す方向に変えました。
以前の方法よりも落ち着いていましたが時すでに遅し。

鶴正は数日間食欲がぐんと落ちてしまいました。
その後少しずつ食べるようになりましたが飼育員を見るだけで行ったり来たり。常同行動を繰り返すように。
今までやったことがない鳥インフルエンザ対策で急を要してたとは言え、
できるだけストレスをかけない方法を話し合ってもっと彼らの事を考えて行動すべきでした。
 

鶴正2    鶴正
 <鳥インフル対策前の鶴正>   <対策後。羽根は薄汚れて痩せた・・・>

現在は私自身が常同行動の引き金となっているのでできるだけ好物を与えるようにしたりと飼育員が怖くない存在である事を示そうとしています。
どれくらいかかるか分かりませんが飼育管理するうえで飼育員がストレスとなっては元も子もありません。
焦りはありますが、少しずつやっていきます。

鶴夫
      <魚をつつく鶴夫>

鶴夫は目の前で餌を食べてくれるくらいまで回復。
元々あまり物怖じしない性格なのが良かったのかな。
怖い思いをさせてごめんよー

※注※
鳥インフルエンザはヒトへの感染はほとんどありません。万一、外で鳥やその糞を触ってしまってもきちんと手を洗って消毒を行えば防ぐことができます。

(飼育員 反省中のいのうえ)

2017年2月22日

酉インフルエンザ~その1

2017年2月15日

酉年なのにトリインフルエンザが全国で猛威を奮っているというなんとも皮肉な年となってしまった2017年。

でも、ピンチはチャンス!!

こんなときだからこそ鳥を飼っている動物園がメッセージを発信してナンボだと思います!

イベント内容を変更せざるを得なかったり、鳥の展示が見づらくなったり色々とマイナスな面が多いですが、少しでもプラスに変えられるようにブログを使ってお話できたらと思います。

ただし、私もそこまで詳しいわけではないので、皆様と一緒に勉強しながらお伝えしていければと思います!

ペンギン アヒル

 <防鳥ネットで覆われたペンギン舎>      <アヒルとバリケンは裏側へ>
 

初回は「鳥インフルエンザってなんだろう」ということで、鳥インフルエンザについて簡単にお話しします。

では、そもそもトリインフルエンザとはどんなものかといいますと、鳥がかかるインフルエンザのことです。

・・・ん?そのまんまじゃないかというツッコミが飛んできそうですが、そのまんまなんです。

インフルエンザとは「インフルエンザウイルス」に感染して起こる病気のことです。
 

インフルエンザウイルスにも様々な型があり、病院で言われるA型、B型、C型というのがこれです。さらに、同じ型の中でも細かく分かれています。Aソ連型とかA香港型なんて言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。専門的には「H」と「N」の組み合わせで「インフルエンザ○型H○N○亜型」と表記されます。例えば、先ほどの香港型とソ連型を正式な表記にすると、香港型は「A型H3N2亜型」、ソ連型は「A型H1N1亜型」となります。こういった感じで、A型の中だけでも100種類以上に分けられるそうです。
 図
さぁ、だんだんブログがつまらなくなってきましたが、これがわからないと説明できないのでもう少しのご辛抱を!

この細かな型の違いによって感染しやすい動物が異なります!例えばA型は鳥類と人を含めた一部の哺乳類で感染例が見られるのに対し、B型とC型は人でのみ感染します。人間がかかるインフルエンザを「ヒトインフルエンザ」、鳥にかかるインフルエンザを「トリインフルエンザ」と総称しているのです。他にも「ウマインフルエンザ」「ブタインフルエンザ」「イヌインフルエンザ」なるものがあるそうです。また、おなじA型でも人はH1N1、H3N2等に感染するのに対し、鳥類はH5N2、H2N2等に感染します。従って、基本的には人はトリインフルエンザにはかかりませんし、鳥はヒトインフルエンザにかかりません。ただし、一つの型が1種の動物にだけ感染するわけではなく、ブタインフルエンザの型を見るとH1N1、H5N2といった具合に、人とも鳥とも同じ型のウイルスに感染する場合もあります。
 ヒト トリ

        <ヒト>                  <トリ>

ウマ タヌキ

        <ウマ>                  <イヌ>

ブタ

        <ブタ>

 みなさんついてきてますかー?この話でラストですよー!

さらに、型の違いによって感染力や症状が異なります。私たちが「やっちまった~」と仕事を休まなければならない体の節々が痛くなるインフルエンザはA型とB型で、症状が重い上に感染力も強いため家に閉じこもっていなければなりません。それに対しC型は免疫力が弱い子供で重い症状が出るくらいで、大人だと風邪と間違える程度の軽い症状になることが多いそうです。

トリインフルエンザも同様で、症状が重いものから軽いものまで様々です。全ての型において、病原性が高いもの(国際的な検査基準に基づいて決めれられます)は「高病原性トリインフルエンザ」に分けられます。また、「H5」と「H7」は「低病原性トリインフルエンザ」、それ以外の型は「トリインフルエンザ」に分けられ、死に至るような重い症状にはなりませんし、症状が出ないこと場合もあります。

そして、ビックリなことにトリインフルエンザは多くの鳥の体内に普通に存在しています。そう!トリインフルエンザは別に珍しい病気でもなんでもないんです。体内にいて症状がない場合もありますし、症状が出ても軽いので鳥が自力で治してしまうのです。そもそもウイルスは鳥や人など宿主となる生物がいなければ生きていけないため、宿主を殺してしまってはウイルス自身が生き残れないのです。宿主は死なない、でも自分も生きるがウイルスたちにとっては理想なのです。

しかし、その中で極一部の高病原性のウイルスが流行ってしまうと、瞬く間に広がり人間社会に影響が出てきてしまいます。なので、鳥インフルエンザだーと大騒ぎになるのは高病原性トリインフルエンザを指しているのです。このあたりの詳しい話は別の回でご紹介します。

図

<まとめ>

・インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因

・インフルエンザウイルスには様々な型がある 

・型によって発症する動物や症状が異なる

・トリインフルエンザは当たり前に存在する

・高病原性トリインフルエンザが危険!
 

以上!長々と書いてみましたがどうでしたか?

「へぇ~なるほど!」と思っていただけた方が数人でもいればありがたいです。

今回は概要だったので小難しい話しになってしまいましたが、次回からは動物園とのかかわりや私たちがどうトリインフルエンザと向き合っていけば良いかなど、もっと楽しい話にしたいと思いますので懲りずに読んでいただければと思います!

ページ下の「分かりやすかった」をポチっとしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします!笑

ではでは、ピンチはチャンス!頑張りますよ~!

分かりやすいが一件もなかったら即終了 中本

※当園は本文にもあるように鳥インフルエンザ対策をしっかり行っております。安心してご来園下さい。
(鳥を担当してないお前がなんで書くんだ、と言っても書きたいという熱意でOKした園長より)

2017年2月15日

トラとライオンの節分

2017年2月9日

2月3日は節分でした。
かみね動物園でも節分イベントを行いました。盛り上がったその様子はこちらのブログで↓
www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/takahara/p058063.html(新しいウインドウが開きます)

さて、イベントで落花生の恩恵にあやかったチンパンジーたち。
やはり節分と言えば豆まきなので各地で動物に豆をあげるイベントが行われたようです。
ここであまりクローズアップされないのが猛獣。
トラ ライオン
豆は食べないけど何かできないかしら。
・・・はっ、恵方巻き!!
関西発祥の習慣らしいですが、ここ数年で関東圏にも大進出してますね。
ちょいと作ってみましょう。

竹筒

まずは竹筒を用意。

肉 乾草 
     <肉>           <乾草>         
そして具材を用意。猛獣なので牛肉と鶏頭をチョイス。後は草食獣に与えている乾牧草。

肉詰め 猛獣用恵方巻き

具材を詰めて乾草でふたをします。
猛獣は鼻がとても良いので中身が見えずとも匂いで分かってくれるハズ!

ガラムマサラ

今回は乾草にガラムマサラ(カレースパイス)を振りかけたものも用意しました。
不思議な匂いがする竹筒にどんな反応を示すかな?

展示場にセット 展示場にセット2

展示場にセットして、さあ~外に出ましょう!
今回出ていくのはライオンの「きぼう」と「オーちゃん」、トラの「さわ」です。

オーちゃん

最初に反応したのはオーちゃん。肉が入っている竹筒にかじりついています。

オーちゃん オーちゃん3

なかなか出ないので奮闘している様子。見えているのに~出てこない!もどかしい!といったところでしょうか。
手が器用なサルであれば中身を引き出すことができますが、猛獣にはできません。
とにかく遊んで落としてその衝撃で肉を落とすしかないのです。

さわ

一方、さわ。
あ、何か見つけた。ふんふんふん。匂いを嗅いでいます。あれはガラムマサラの乾草。

さわ2 さわ4

あ、後ろにも。ふんふんふん。それは肉が入っている竹筒。取り出せるかな?

さわ3

ちょいっとな。

あれ? 

あれ?

ごろん

あ・・・あれ?さわさん、もう少し粘ればきっと取れるよ・・・!
ごろん

ごろん。
「分かんな~い。取ってえ~。」と言っているかは分かりませんが、明らかに私を見ながらのごろん。ちょっと難しかったでしょうか。さわは早々に諦めてしまいました。

運ぶオーちゃん 

一方オーちゃんはまだ執着中。
ちなみにまだ一回も出てきてない「きぼう」はこの時寝室にいるメスたちの事が気になってなかなか外に出てくれなかったので写真が撮れず(泣)

ただ、展示場に遊び道具を入れるといつもきぼうに独占されるので今回はオーちゃんがたくさん遊べたから良かったこととします。

オーちゃん楽しそう 
こんな感じでゆるっと猛獣の節分は終わったのでした。
もう少し改善してやろー

竹筒 乾草

ちなみに夕方の掃除でトラの展示場に入ったらガラムマサラ入りの竹筒と乾草が落ちていました。さわも見ていない間にそれなりに遊んでくれたようです。

トラ

 (飼育員 鬼嫁じゃないよいのうえ)

2017年2月9日

君の菜(な)は

2017年2月1日

突然ですが、皆さん春の七草って全ての名前を言えますか?
私は小学生の頃は言えたのですが大人になってから七草とは無縁の生活送ってました。
最近調べてやっと覚えました。

春の七草
  <これ合ってるのかな?不安>

セリの貧弱さに不安を覚えますが。。。
人間界では新春の1月7日にこの七草を粥に入れて食べると災いを避け、長寿富貴を得られると言われています。
富が欲しいのは私なのですが、動物園において長寿と言えばこの方。

バシャン

カバのバシャンです。
寒くなってから、外の水にはほとんど入らないため室内にいます。
相変わらず食欲旺盛でとっても元気に過ごしていますよん。

あかぎれ
 <昨年1月の様子。頭からお尻にかけて>

昨年はこのように皮膚のあかぎれが全身に広がり見た目に痛々しい姿にしていしまいました。

皮膚
  <2017年1月26日に撮影したもの>

今年はご覧のとおり。
予防的にワセリンを塗っているのが功を奏してくれたようです。
ただ、今年は腹側や脚など今までなかった部分にあかぎれが起き始めたので
更なる対策を考えねばなりません。
出来る限り快適に冬を過ごして欲しいので考えられることはやらねば、なのです。
そんなバシャンにゲン担ぎ。
今年も元気に過ごしてほしくてデパートで購入した七草をあげてみることにしました。

七草を食べる

乾草の上にのせて、って・・・
あげた側から、ああっもうっ。写真が間に合わない!!

むしゃむしゃ 一心不乱に食べ続ける

ムシャムシャ

なんじゃい

なんじゃい。

なんかもう早すぎて全く写真でお伝えする事が出来なかったんですが、七草はあっと言う間にバシャンのお腹におさまったのでした。
美味しかったですか?

今年の3月には54歳の誕生日を迎えます。
春の七草食べたし、無事に冬を乗り越えてお客さんと一緒にお祝いしますよ。
バシャン、今年もよろしくお願いします。

(飼育員 前前前世もいのうえ)

2017年2月1日