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staff blogスタッフブログ (スタッフブログ)

カピバラのその後

2015年12月28日

書こう書こうと思いながらすっかり年末になってしまいましたが、6月11日に生まれたカピバラのその後についてお伝えしたいと思います。遅くなりまして申し訳ございません・・・。

カピバラ

以前お伝えしたとおり6つ子のうちのオス3頭は那須どうぶつ王国にお引越ししました。

残ったメス2頭とオス1頭についてお知らせします!

なんで引越しちゃうのと思った方はこちらをどうぞ↓

http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/nakamoto/blog201412.html


メス2頭は10月28日に群馬県にある桐生が岡動物園にお引越ししました。

カピバラ カピバラ

      <いってらっしゃい>             <新居に到着>

桐生市と日立市は親善都市の関係を結んでいて、キリンの「キリナ」をブリーディングローンでお借りしていたりと以前から親交が深く、今回は親善都市提携50周年を記念して行われました!

彼女達は向こうでの暮らしにもすっかり慣れ、早速公募で「まゆ」と「きぬ」という素敵なお名前をつけてもらったようです。
詳しくは↓

http://www.city.kiryu.gunma.jp/web/home.nsf/39f1c87d0d44690349256b000025811d/d89f248d7eed0afe49257f02003d1a9b?OpenDocument

2頭が親善大使(自称です)として大いに活躍してくれることを願っています。

かぴばら かぴばら

カピバラと交換で桐生市からはホロホロチョウがやってきました。

ホロホロチョウ

    <ホロホロチョウです!>

 

さて、残ったオスの1頭ですがこちらは当園で展示中です。

おにぎり

この1頭を巡って様々な苦難がありましたので、そのお話をしたいと思います。

と、その前に桐生市で名前をつけてもらう都合上残った彼にも名前がついていなかったので、担当者の独断と偏見で「おにぎり」という名前をつけましたことをご報告します。

理由は・・・、直接聞きにきてください!
かぴばら

   <おにぎりです!ヨロシク!>
 

そもそもカピバラはおっとりしていてやさしそうなイメージがありますが、実はそうでもありません。人に対しては優しい動物なのですが、カピバラ同士では激しいバトルをして頻繁に傷を作っています。性格も様々で、気の強いのもいれば臆病なのもいます。そんな個性豊かな面々が小競り合いを繰り返し、微妙なバランスを取りながら群れを作っています。
 かぴばら 

現在当園では繁殖をコントロールするために母親と娘のメス群れと父親と息子のオス群れに分けて飼育しています。

メス2頭を桐生に搬出したタイミングで、おにぎりをオスの群れに入れることにしました。現在オス群れには父親の「コタツ」と昨年秋に生まれた兄弟の「おもち」と「おはぎ」の計3頭がいます。ここですんなり入れれば良かったのですが、当然そうは行きません。 

かぴばら かぴばら

      <おもちとおはぎ>        <オスのグラウンドで寝るコタツ>

コタツは無関心だったのですが、おもちとおはぎは誰なんだろうと近寄っていきました。ここまでは、想定の範囲内だったのですが、ここから予期せぬことが起こったのです!

おにぎりがおもちとおはぎに攻撃を加えたのです。

え!逆でしょ!?

おもちとおはぎは一瞬怯みましたが、すぐさま反撃しおにぎりを激しく追いかけました。追われたおにぎりはすっかり意気消沈し、隅のほうでブルブル震えていました。自業自得だろうと思いながらも、怪我をされても嫌なのでその日はおにぎりをメス群れに戻しました。

そこから苦難の日々が始まったのです。
カピバラに限らず動物の子供はよく追いかけっこをして遊びます。誰かが急な動きをするとテンションが上がってみんなで大はしゃぎです。まだ幼さが残る兄弟は逃げるおにぎりの動きに反応し、遊び半分でさらに追いかける、追われるから怯えて逃げる、逃げるから追う・・・の負のスパイラルが生まれてしまいました。おにぎりが常におどおどしているので、友好ムードになる気配はまったくありませんでした。

さてどうしたものかと、今度は一頭ずつ合わせてみることにしました。また、できる限りおにぎりが落ち着けるように、普段はメス群れが使っている寝室でお見合いをさせてみました。おはぎとのお見合いは最初こそお互いよそよそしかったものの、次第に距離が縮まって最後は二頭でくっつくまでになりました。おはぎが慣れない場所につれてこられて心細くなったところに、おにぎりという相棒を見つけたといったところでしょうか。

しめしめと今度は同じ方法でおもちとのお見合いを試みましたが、こちらは相変わらず追い掛け回したり、一向に距離が縮まりませんでした。

う~ん。どうしたものかなと悩みました。おはぎが仲良くしているのを見れば落ち着くかなと兄弟一緒に合わせてみましたが、全くだめでおはぎも一緒になって追いかけるしまつでした。

よし今度は父親だ!ということで、コタツとおはぎとおにぎりを一緒にしてみました。落ち着いているとまではいかないものの、大きなトラブルは起きなかったのでこのまま様子を見ることにしました。

かぴばら  かぴばら

   <コタツ おはぎ おにぎり>          <コタツとおにぎり>

問題のおもちは一時的にメス群れに入れることにしました。そこで転機が訪れたのです。ある日おもちがメスたちから攻撃を受けたのです。メス6頭の集中攻撃にかなり意気消沈のおもち。多少の傷もあったので、おもちをオス群れに戻しました。

すると意気消沈したおもちはおにぎりを追いかけることなく、隅でおとなしくしていました。なんだこれはと驚きながらも数日観察を続けましたが、その後もおにぎりに攻撃を加えることなく、オスの群れは次第に落ち着いていったのでした。

めでたしめでたし。

かぴばら

 <おはぎ・コタツ・おにぎり・おもち>


今回の一件は、おにぎりが自分の立場を考えずに攻撃したことから始まりました。ではなんでこんなことになってしまったのでしょうか。

私が考えた結果はこうです。カピバラの母親は気が強く他の個体に対しては攻撃的ですが、赤ちゃんに対して非常に寛容です。そのため赤ちゃんは母親のそばで我が物顔で餌を食べることができます。これまでの仔は半年もすると次の赤ちゃんが生まれていたため、母親に一人前とみなされ追い払われていましたが、今回は次がいませんでした。ずっと我が物顔で餌を食べていたおにぎりは甘やかされたスーパーおぼっちゃまになっていたのです。

授乳もこれまでですと2~3ヶ月ほどで終わっていたのですが、今回は5ヶ月近く与えるなど様々なところでいつもと違う様子が見られました。

かぴばら 

     <母ハナとおにぎり>

最初におはぎやおもちに攻撃したのも、世間知らずゆえの行動だったのでしょう。

人間同様、動物の社会もいろいろあるんだなぁと感心させられる出来事でした。
おもちには少々悪いことをしてしまいましたが、彼も若干調子に乗っていた部分があるのでこれで少し落ち着いてくれることでしょう。

また、動物の社会は単純ではありません。同じ種類でも仲間入りやカップリングなどは非常に神経を使います。動物種に合った、そして個体に合った飼育方法を考えることが大切なのです。

そんなドラマを生んだおにぎりですが、現在は夜は母親のいるメス群れ、昼は父親のいるオス群れに入れています。

今後はメス群れオス群れを行き来させて、暖かくなったころに完全にオス群れに合流させる予定です。

まだまだ波乱万丈ありそうですが、今後も彼の成長を暖かく見守っていただければと思います。

雑草育ちの飼育員 中本

かぴばら

<おもちとおにぎり こんな日が来るとは>

2015年12月28日

サイとサシバエ

2015年12月20日

 夏から秋にかけて動物園に来られた方はクロサイ舎の前で彼を見かけませんでしたか?

 サシバエトラップ2 見つめる
         <暑い日も寒い日も風の強い日も一日立っていました>

サイを1日中見つめる青年。彼は一日サイの行動を観察しその記録を付けています。
その理由はこちらの青い板にあります。

サシバエトラップ3 サシバエトラップ1
             <昆虫がたくさんついています!>

この板、粘着シートになっていてあらゆる昆虫がくっついています。

実は毎年夏から秋にかけてクロサイにたかるサシバエとその数、そしてそれに伴うクロサイの行動変化を彼は調べていたのです。

サシバエ 画像:wikipediaより

家畜や多くの動物園動物で担当者が頭を悩ませるサシバエ問題。
動物の体についてその鋭い口器で皮膚を刺し血を吸います。
私も何度か吸われて痛痒い思いをしています。

主に動物の糞から発生し、血を吸って生きる彼らの生態はミステリアスで魅力的なのですが、動物からすると痛み・痒みを伴いストレスの要因となるので飼育担当者としてはなんとかしたいところ。

マキ

クロサイの場合泥浴びをして皮膚をコーティングし、サシバエや寄生虫類を防ぎますがそれだけだと防ぎきれず、また虫除けを体に塗っても今ひとつ効果を感じられず。そもそもサイ自身はどれくらいサシバエを迷惑がっているのか、サシバエによる行動への影響はどれくらいあるのか・・・。

そんな話を茨城大学さんにしたところ興味を持っていただきこの度冒頭の彼が卒業論文のテーマにこの問題を扱ってくれました。

まずはサシバエが獣舎のどの辺りで多いのか、季節ごとに数が違うのか、それに伴いクロサイの行動はどのように変化するのか、寝室内での行動は?駆虫薬を使ったら?サシバエは体のどの部分によくつく?

あらゆる方面からアプローチして実際サシバエがクロサイに及ぼしている影響について今回の研究では調査してくれています。

 カメラ 夜間サイ舎
  <部屋上部に暗視カメラを設置>       <これで夜間の行動も見られます>

夜間観察は寝室内にビデオを取り付けて行いました。

忌避剤の塗布 忌避剤の塗布2

また、駆虫薬を体に塗布してサシバエを体につきにくくした状態での行動観察も行いました。飼育員が塗布している間サイたちははじっとしてくれています。

動物園がもつ役割の一つに「調査・研究」というものがあります。
(他の役割についてはこちらをご覧ください)www.city.hitachi.lg.jp/zoo/001/p046053.html(新しいウインドウが開きます)

動物や動物園に関わることを研究しそれらを希少動物の保全や飼育技術にいかしていくことが主な目的です。
今回行なったクロサイの調査は大学との連携によってできました。
このように他機関と協力しながらその役割を果たしていくことは動物園にとっても大学にとっても大きな意義であり「研究」の可能性を広げることが出来たのではないかと考えています。

今までも学生さんが動物を研究テーマに取り上げてくれたことはありましたが、今回のように連絡を取り合いながら調査を進めていったことは私は初めてであり、今後もこのような連携を続けていきたいと思いました。

彼の卒業論文はまだ完成していないようですが、できあがったものを見て今後の飼育技術向上に役立てていきます。そうすれば来園者の皆様にもより面白い動物園をお見せすることができるでしょう。

 本郷君

ありがとう、本郷君!!

(飼育員 卒業研究は「糞虫」いのうえ)

2015年12月20日