動物園に来て、「くさい!」「意外とにおいがしないな~」と思った経験はありますか?
もしくは、「今までにおいなんて気にしたことなかった…。」という方もいらっしゃるかもしれません。
例えば「草食動物のにおい」。といってもゾウやキリンなどの大型の動物から、ウサギやモルモットといった小型の動物まで存在します。そしてその「におい」もまた違ってきます。
クロサイはクロサイ自身から強いにおいがするわけではないですが、便をすると、「お、今排便したんだな」というにおいがあたりに広がります。自分の縄張りを主張するのに、出した便を蹴り散らかすので、さらにそのにおいも広がるのでしょう。
以前別の動物園でクロサイを近くに飼育していた私にとっては、知り合いのいない日立に来て働き始めた時にホッとする香りでした(笑) また、雨に濡れると、しっとりした肌から水分が蒸発する蒸しっとしたにおいもします。
サイと同じ草食動物、同じ奇蹄目(蹄が奇数の動物種:サイ科・ウマ科・バク科のみ)でも、ポニーはまた違ったにおいがします。
展示場周りはいわゆる牧場のにおい、とでもいうのでしょうか。家畜ならではの香りがし、目をつぶるとまるで牧場にいるような気分を味わえます。そして面白いのが、同じ環境で同じ牧草を食べているのに個体によってにおいが違うこと。年齢差なのか、種差なのか、個体差なのか…。これもまた担当者になって密に接していないと分からないものなのかもしれません。
クロはおひさまの暖かさを吸収しやすい色だからか、晴れている日には干したお布団の香りがします。(個人的感想)
こちらは偶蹄目ですが、同じぐらいの大きさでいうとシカも草食動物の一種です。
かみね動物園のシカはポニーと食べているものはほぼ変わりませんが、シカからは野性味あふれるにおいがします。野生でのオスのシカは自分の縄張りを主張するため、自分の尿を泥場にした後、その泥を体に付け、木に擦り付けるなどの行動が見られます。
当園のヤクシカ前は香りスポット。オス3頭だからなのでしょうか。においによる存在のアピールはピカイチです。
動物のにおい、花や土のにおい、食べ物のにおい。自然界においての「におい」は意外と意味のあるものが多いです。
動物においては種類や食性によって体臭や便のにおいは変わってきます。動物園ではそのにおいが変わったとき、体調が良くないのか?というバロメーターになることもあるのです。
某動物園では、「園内のにおいをなんとかしてほしい」との意見が入ったこともあるようで、その意見に対するその動物園の園長のお返事が素敵だなと思った記憶があります。
かみね動物園でも、動物園内を歩いていると、「くさーい!」「くさいから嫌!早く行こう!」という言葉が聞こえてきます。くさかろうと、いいかおりであろうと、においが気になった時、その時こそ「本物の動物を感じるチャンス!」
なんでそんなにおいがするんだろう?そのにおいは何の意味があるんだろう、もしくはなんの意味もないのかもしれない…なんて考えてみてください。動物の新たな一面に気付けるかもしれません。
すれ違った飼育員から普段嗅ぎなれないにおいがしたら、なんの動物の担当をしているんだろう…と想像してみるのもまた一興。
(飼育員 ところ)