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staff blogスタッフブログ (飼育員ブログ)

動物にも人にもエンリッチメント

2022年7月11日

以前、採食時間を延ばしたい!ということでシマウマのエンリッチメントをご紹介しました。
なんじゃそりゃ?という方、時間つぶしに読んでみるか~という方、以下のリンクからどうぞ。
Part1: https://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/900/p102079.html
Part2: https://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/900/p103803.html

今回は担当動物が変わったので、違う種類の動物のエンリッチメントをご紹介しようと思います。

その前に…

「環境エンリッチメント」という言葉を聞いたことはありますか?
動物園で飼育されている動物は野生とは違い、単純で単調な生活になりがちです。環境エンリッチメントとは動物の福祉や健康の改善のため、単調な環境に変化をつけ、行動や心理的に少しでも豊かで充実したものになるよう工夫をすることをいいます。最近では、動物園でよく使う言葉の一つになっているような気がします。

一言で「エンリッチメント」といっても種類は様々で、一般的には

・空間:その動物の特徴的な行動に配慮した空間をつくること
・採食:エサの種類や与え方を変え、野生下と同様に考えたり時間をかけてエサを得るようにすること
・感覚:視覚、嗅覚、聴覚など五感を刺激すること
・認知:複雑な遊具や装置を設置して、考えて使用してもらうこと
・社会的:群れでの飼育や他の動物と接触し、社会性を再現すること

の5つに分けられています。

ヤクシカ編

今回ご紹介するのは主に採食エンリッチメントです。

まずはヤクシカ。
今までは地面に乾草を置いての給餌がメインでしたが、野生に暮らすシカは下に生えている草以外に自分の背丈の木の葉や、少し背の高い植物も食べることがあります。
ということで、長めの枝が手に入った際には、ぶら下げてみたり、展示場中央の組んである木に入れ込んでみたり。
ヤクシカに木を吊り下げて与える ヤクシカに枝葉を与えている様子

その他にも、美味しく新鮮な草が手に入ったときは、少し難易度を上げるため、シマウマの時にも使用した園芸用ネットを使用したりしています。

雑草を食べるヤクシカ

アナグマ編

いらないから…といただいた自動給餌器を設置しました。

アナグマ用自動給餌器

人がいなくてもタイマーでエサが出てくるようになっています。最近は音がすると寄ってきますが、エサの入れ方が悪いためか、その時々で出てくる量に少し差があり、それはそれで今回はこんなに出てきた!今回は少ないの?と緩急をつけることができています。

そして、ミミズが大好きなアナグマたち。

毎日あげられるほどの量は確保できませんが、見つけた際には、展示場に撒いたり、土の中に隠してみたりと、「探す」「穴を掘る」という野生でもみられる行動を引き出すようにしています。

ミミズを探すアナグマたち 土の中にいるミミズを探すアナグマ

そして夕ご飯。基本的な夕食メニューは決まっていますが、いつもと違う果物が手に入ったときには、メニューが変わって少し豪華になったりもします。与え方もその時々で、皮をつけたまま与えたり、むいてみたり、切り方を変えたり、丸のまま与えてみたり。考えて食べてもらえるよう工夫もしています。

アナグマの夕ご飯

この日は七夕だったので、ハート型のサツマイモを入れました。七夕といえば星なのに、この時の自分はなぜ星形にしなかったのか…。

マーラ編

今悩んでいるのはこのマーラたち。
欲しいものリストでいただいた自動給餌器を使用してみましたが、中に入っているのが分かっているからか、その強靭な(?)前歯で給餌器を齧ったり、ひっくり返したりする個体が現れました。最初は上手に使っていたのに…。
マーラと自動給餌器

吊るしたり、ひっくり返したりしてみましたが、マーラのエサとの相性が悪く、上手く活用できませんでした。

今は食べられる葉っぱを切ってきては、時間を決めずに与えています。
クワの葉を食べるマーラ
この日はクワの葉。

マーラたちのために良いエンリッチメントないかな~と考える日々です。

終わりに

動物のために…と日々考えて作業をしていましたが、先日ふと、自分のボケ防止にもなっているなと感じました。動物のエンリッチメントが自分のエンリッチメントにもなっており、改めて動物たちに敬意を表さずにはいられなくなりました。動物のより良い環境づくりのため、そして自分自身のボケ防止のためにも、今後も新しいエンリッチメントを模索していこうと思います。

今回はわたしの担当動物のエンリッチメントをご紹介しましたが、自分の担当動物により良い環境を、と各飼育員いろいろ実践しています。展示場にどんなものが設置してあって、どんなふうに動物が使用しているのか、ぜひご注目ください。

飼育員 ところ

2022年7月11日