動物園内の最北端、背の高い人気者が暮らしているキリン舎の裏側で、今日も忙しなく工事が進んでいる。職人の方々が手掛けているのは『新猛獣舎』。一昨年に完成したニホンザル舎と去年オープンしたレッサーパンダ舎に続く、トラやライオンたちの新たな根城だ。
≪工事現場の様子≫
今現在ライオンとトラが生活している獣舎ができたのは、52年前。昭和45年、西暦でいうところの1970年のことだ。当時と今では動物や動物園に対する考え方が異なるから仕方のないことだが、環境や使い勝手はお世辞にも良いとは言えない。広さ、安全性、見やすさ・・・改善できそうなことは色々あった。
新獣舎、まず大きく変わるところは寝室の数だ。今まではライオン4頭、トラ1頭の合計5頭が4部屋に分かれて暮らしていた。ライオンのうちメス2頭の仲が良好で、ルームシェアをしてくれていたので本当に助かった。一緒にいることが一概に悪いわけではないが、部屋数は多いに越したことはない。今まで1部屋しか割り振られていなかったトラの寝室は4部屋に増え、ライオンに至っては5部屋となる。これで、他園から新しい仲間がやってきても安心だ。
≪2頭の雌ライオン≫ ≪新しいライオンの寝室≫
「鉄格子が太くて寝室が見えにくい」とお客さんが言っていたのをよく耳にした。そこで新獣舎では寝室を見せないことにする。というのも立派な室内展示場ができるからだ。今までは寝室兼室内展示場であったため、正直お客さんに見せるような作りではなかった。今後は、ガラス1枚挟んですぐ向こう側に動物たちがいる。視界を遮る鉄格子はないってわけだ。
≪今の室内展示場≫ ≪新しい室内展示場(脚立の置いてある所に動物が来ます)≫
新要素は室内展示場だけではない。サブパドック。お客さんからは見えないが、雨風日光に当たることができるちょっとした運動場だ。日中ここに居てもらう個体は様々、妊娠中で警戒心が強い母親、他の個体とそりが合わない気難しいやつ、治療中で安静にしていなければならない病人もとい病獣・・・。これからは彼らにも、毎日外の空気を吸ってもらえる。きっと少しは気分転換になるだろう。なんてったって、プライベートプールまであるんだから。
≪ライオンのサブパドック≫ ≪トラのサブパドック(プール付き)≫
ここまで獣舎内部のことについて話してきたが、お客さんが一番気になるのは外の展示場だろう。是非楽しみにしていてほしい。壁に囲まれ地面の大半がコンクリ―トである今の展示場と比べれば、まさに月と鼈。新展示場の地面はやわらかな土、さらには生息環境をお手本にして草木で彩る算段だ。ライオンはサバンナを、トラは森林を表現している。逃げ出さないようにトラの頭上をフェンスで蓋ってしまうのが玉に瑕だが、清々しい木陰を得るためならば仕方がない。
観覧場所はガラスエリアとフェンスエリアの豪華二本立て。おまけにライオンは高台からも見渡せる。ガラス越しでは動物の姿をより鮮明に見ることができ、フェンスの場所では彼らの声や匂いをダイレクトに感じることができる。五感のうち視覚、聴覚、嗅覚の3つをフル活用して、彼らの鼓動を感じてもらいたい。
≪今のライオン展示場≫ ≪新しいライオン展示場(イメージ)≫
新猛獣舎のお披露目は夏頃を予定している。このご時世だから、「ぜひ、全国から足を運んで来てください!」なんて気軽には言えないが、1人でも多くの人々に感動をもたらせたら御の字だ。
(飼育員 風間)
最後に、、、クラウドファンディングにて背中を押して下さった多くの方々、本当にありがとうございました。皆様の思いに応えられるよう、より良い獣舎、より良い動物園を目指していきます。今後ともよろしくお願い致します。