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staff blogスタッフブログ (飼育員ブログ)

マキのこと、命のこと

2019年2月27日

2月26日の夕方、当園生まれのクロサイ、マキが息を引き取りました。
享年28歳でした。
約40年前後と言われるサイの寿命にしては、少し早すぎた死でした。
国内のクロサイ飼育頭数は約20頭。
世界的にも少なく、野生では絶滅の危機にある動物です。


仲良く食事
(仲良く食事をするマキ(奥)とメトロ(手前))


マキの晩年、3年間は闘病の日々でした。
ここでご報告すること、書いてある内容、私の感情など、整理しきれていません。
でも、みなさまに知ってほしい・お伝えしたいことがあり、
どれだけうまく表現できるか不安ですが…長くなります。

※一部、ショッキングな写真もあるかと思いますので、ご注意ください。


始まったのは、2016年の夏過ぎ。
『なんだかボーっとして、動きや食いがよくないんだよね』
と飼育員からの報告。
『暑いし、日向にいたし、熱中症ぽいのかな?そんなに劇症・緊急性はなさそうだし、日陰にうつして様子をみましょう』

その後、秋になっても調子は回復せず、痩せや皮膚炎、関節炎の症状もみられてきたため、血液検査を実施することに。

具合悪いマキ
(痩せて、皮膚のひび割れや浅黒くなっているマキ)

ただ、このころはハズバンダリートレーニング(診察・健康管理のために、動物に協力してもらうこと)が進んでおらず、マキをなだめながら先輩獣医が採ってくれました。
また尿検査も実施しました。

馴致の採血
(馴致による採血の様子。バシバシたたくと気持ちよくなると横になります。そこをすかさずチクっと!攻防戦です。)


その結果、貧血や腎臓に負担がかかっているような状態が疑われましたが、
当時は、園内で血液検査を実施する体制(機械や予算)がなく、近隣の動物病院さん・県北家畜保健所のご厚意にお願いしており、さらに詳しい項目については調べることができませんでした。
(その節は大変お世話になりました!!!)


結局、当時は原因がつかめず、対症療法として、
血中のアンモニアを下げる投薬や皮膚炎の治療を行い、
水をたくさん飲んでもらうような飼育管理の工夫を実施していました。

それでも良くならず、同居しているオスのメトロも検査してみることに。
メトロは元気だったにも関わらず、マキと同じような結果で…
これは、飼料や飼育環境の問題かな?と思うように。

やはり原因の特定、継続的なモニタリングが必要だ!ということから、

血液検査や飼料の検査ができる予算を獲得。
(市民のみなさまの大切なお金を使わせていただいています。いつもありがとうございます!)

で、詳細な検査を実施してきた&調査・考察してきたところ…

飼料による慢性高Ca血症からくる多臓器不全がいちばん疑わしい結果に。
(餌が原因で、血液内のカルシウムが高くなり、その影響が腎臓や肝臓などの機能を壊している状態)


…と、さらっと書いてますが、この考察にいきつくのに約2年かかってしまいました。

なぜなら、体調を崩し始めた当時、国内で『サイにはこの餌をあげたほうがいい!』と言われている餌をあげていたからです。

だから、恥ずかしながら最初は飼料を疑いもしませんでした。


クロサイのよくある病気、報告のある文献、検査結果や症状から
・ヘモクロマトーシス
・ペレットによるビタミンD中毒
・飼料によるカルシウム・蛋白多給、リン・ビタミンE不足
・レプトスピラ症
・副腎皮質機能低下症
・悪性腫瘍
・好酸球性肉芽腫
…などなどを疑い、


あーでもない、こーでもないと
・サイの飼育マニュアル
・サイの論文
・犬猫人牛馬の関連文献
・サイ飼育園館をはじめとする他園館への相談
・近隣動物病院・家畜保健所・獣医の友人への相談
・大学への相談と各種検査
・獣医系勉強会での症例相談
・飼料会社への問い合わせ・相談
・アメリカの動物園の栄養士さんからのアドバイス

をこねくり回して、飼育方法や検査・治療をいろいろ試しながら、
光が見えたり、見えなくなったり


サーモグラフィーカメラ
(サーモグラフィーカメラで体の温感・冷感をチェック!)


ステロイドの副作用ステロイドの副作用、治療
(ステロイドの投薬で一気に状態良化!と思いきや、副作用で小さな傷からの感染・炎症…)


とにかく、マキ・メトロを元気にすることを第一に、たくさんの方々にご協力いただきました。
本当にありがとうございました。


その後は、マキの調子があがると、メトロが悪くなり。
メトロがよくなるとマキが悪くなり。
2頭ともよくなったり、悪くなったり。


メトロも不調
(立ち上がるのもしんどい時期があったメトロ。食欲もほぼ廃絶だったのが…

いまはすっかり元気!)

マキの角耳の皮膚
(角はガサガサ、耳の皮膚はボロボロになった時期も…)


トレーニングにもしっかり協力してくれて、
体重測定や採血も、治療のための注射も上手に協力してくれるように!!!
定期的にモニタリングをしてきました。


採血、初成功!
(トレーニングで採血、初成功!の瞬間)


そして気がつけば、もう約3年。

この冬は、これまでの検査結果をもとに、飼料や温度に気をつけて飼育してきました。
調子も良さそうに、よく動き、よく食べていたマキ。


モリモリ食べるマキ
(一時期食べなくなった枝葉もモリモリ食べる!)


しかし、1ヶ月ほどまえから急に皮膚のひび割れや皮膚炎がみられるようになり、
治療や保温強化を行いましたが、改善がみられたりみられなかったり…

皮膚炎悪化
(皮膚のひび割れや皮膚炎)


防寒具防寒着
(保温のための防寒着を作ってみました。体はぽかぽか、皮膚はしっとりしていてよい感じ!)


先週からは、鼻水や皮膚の化膿が進んできたため、抗菌薬の投薬もしていました。
化膿の状態は良化していたようにみえてはいましたが、3日ほどまえから食欲低下・ふらつき・出血傾向が…
血痕
(朝いくと、血痕が。おそらく鼻出血。マキの動き自体は良好だったのが本当に不思議…)

これらに対する投薬も行なっていましたが、反応はイマイチ。
ただ、そんな状態でも、顔を上げてくれたり、注射に協力してくれたり、本当に頑張ってくれていました。


そして、2月26日。
朝も起き上がったり、横になり休んだり、急変した様子はなかったようです。
ただ、その後、起き上がろうとした際に、肢を滑らせたのか、踏ん張りが効かなかったのか、態勢を崩してしまったそうで…
起立困難となり、夕方、職員で起立介助・体位変換も試みましたが、そのまま息をひきとりました。


永眠するマキ
(永眠するマキ)


~マキが教えてくれたこと~
・一番大事なのは飼育管理。
温度・湿度・床材・飼料・科学的評価で防げたことや改善できたことは多くありました。
国内が、みんながそうだからって、それにあてはまらない個体もいること、状態を見極めることの大切さ。
常に情報をアップデートする努力。

・飼育管理だけじゃ、健康にできなかった時の治療。
原因を早く追求して、状況に合わせて的確な治療を園全体で共有、チーム医療を行うこと。
技術や体制を万全に整えること。
迅速な対応。

理論上、やりたい治療はまだまだありました。
それを実現するための自分の能力・サイという動物の制限・治療のリスク・園の体制・予算など…
いいわけに過ぎませんが、叶わなかったことも多くあります。


動物園で働く職員、しかも獣医師が、こんな思いを、こんな文章を綴ってはいけないかもしれない。
でも、命って、ほんとにはかなくて、大事に大事にしていないとポッと消えてしまうものなんです。

だから、みんなにもっともっと大切に感じてもらいたい。
それを、肌で感じている私たちが発信しなきゃと思ったんです。


マキの苦しみを思うと、悲しくて、悔しくて、不甲斐なくて、
やりきれないのですが、涙はとまらないのですが、

実はここからも勝負です。

私たちは、『生き死に』をみています。
※ある学会で聞いた、ストンときた言葉です。


マキの命を未来につなぐために、最大限活かすために

・しっかりと死因を究明する
・今回の事例をデータに残し、ほかのサイの飼育に役立てる
・配偶子バンクに、マキの遺伝子を保存してもらう
・骨や体を使って研究する
・骨や皮膚、体毛、角など、標本を作り保存する


ことを、いましています。
私たちには、泣いている・立ち止まることは許されません。
でも、私はへなちょこ獣医なものでして、感情がすぐ入ってしまいます…
でも、泣きながらも、立ち止まらないことで、なんとか許してもらえると嬉しいです。


動物のプロでありながら、公務員でありながら、
こんなに感情的な・主観的な内容を綴ってしまい、申し訳ありません。

あふれだす何かが、のどの奥がキュッとなる感じが、
どうしても止められませんでした。

マキを慕ってくれたみなさま、市民のみなさま、たくさんアドバイスいただいた関係者のみなさま、マキとメトロのこどもたち

イベントで活躍
(イベントで大活躍だったマキ)

子育て
(子育て中のマキ)


ポニーと交信
(おとなりのポニーと交信するマキ)

枝葉困る

(枝葉がひっかかって困っているマキ)

私は、顔向けできるような立場ではありませんが、
みなさまに、せめてものご報告と、感謝をお伝えいたします。
ありがとうございました。

マキには頭が上がりません。大先生でした。
本当に本当にありがとう。
マキのアップ

動物たちの元気な姿、私たちの生活のひとつひとつ。
ぜーんぶ、命が源にあって、はかないけど、大切に大切に守っていきたいものです。

今後は、しっかりプロとして、動物園として、
きちんとしたご報告をさせていただけたらと思います。
お付き合いいただき、ありがとうございました。

マキと記念写真

(マキと過ごした4年間は一生の宝物。獣医師・秋葉)

2019年2月27日

2月3日は福は~うち!

2019年2月17日

2月3日は節分の日!

動物園でも節分イベント「動物たちに福をよぼうツアー」をおこないました。

集合場所

(たくさんの人が集まってくれました。赤鬼も青鬼もびっくり)

案内役の職員についていき、いろいろな動物たちの知識を聞きながら福をまきました。

ん?福ってなに?と思った君!

福と言っても人によってさまざまですが、動物たちにとって福と言えば…美味しいごはん!

そこで、今回は福豆や福豆に似た動物たちの大好物をみんなで展示場にまきました。

午前の部はゾウからスタート!

案内人

そろり、そろりとゾウの寝室に入って知識を披露。とっても大きな寝室でした。

豆を食べるゾウ

ゾウの足元に、みんなで福は~うち!と豆を優しくまいてあげました。

器用に豆を食べているところも間近で観察できたかな。

ゾウに続いて、午前中はアライグマとヤギの運動場にも福をまきました。

アライグマ前    ヤギにエサをあげる  

(アライグマはどんなものを食べているだろう?)(ヤギたちにも福をおすそ分け)

午後はマンドリル前に集合して福をよぼうツアー開始!

マンドリルガイド

赤鬼も協力して知識を説明中

マンドリルの挨拶の仕方やオスとメスの違いなどたくさんの豆知識を聞いたあとは、

みんなでマンドリルに福豆をおすそわけ。

福ボード  ケンシロウ豆を食べる

(豆を福ボードの上にころがしながらあげます)(ころがってきた福豆をさがすケンシロウ)

続いて、午後はチンパンジーとニホンザルに福をおすそ分け。

チンパンジーガイド    チンパンジー舎2階

(普段は入れないチンパンジーの屋内観覧室)   (チンパンジー舎屋上から福をおすそ分け。)

 豆食べるチンパンジー 豆ひろうチンパンジー

福豆をダイレクトに地面から食べたり、器用につまんで食べたり、チンパンジーによって食べ方に個性がでていました。

福をよぼうツアー、最後に福をおすそ分けする動物はニホンザル!

ニホンザルガイド

ニホンザルって世界中のサルの中でいちばん北に生息しているって知ってたかな?

などの豆知識を聞きながら福をおすそ分けしました。

動物園のイベントで季節や日本の風習を感じながら、ちょこっと動物についても詳しくなれたかなと思います。

今回の節分イベントのような季節のイベントが動物園では意外とありますので、

みなさん月初めは動物園のHPをチェックしてぜひ色んなイベントにご参加ください!

次のイベントでお待ちしておりまーす!

2019年2月17日