ブログの更新が遅くなってしまいましたが、6月2日にコツメカワウソの「イキイキ計画発表会」を行いました。
イキイキ計画ってなに?
数年前から「イキイキ計画」と題してコツメカワウソの展示場やエサを改良した様子をご紹介しています。狭くて古い展示場ですが、工夫を凝らすことで、カワウソも、見ている皆様も、仕掛け人の飼育員も、イキイキできる、そんな試みです。
以前のものは下からご覧になれます。
その10
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/nakamoto/p051189.html
その11
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/nakamoto/p052598.html
その12
http://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/blog/staff/nishino/p065573.html
<以前のイキイキ計画の様子>
今までは飼育員がいろいろ考えていましたが、今回は皆様に考えていただきたい!ということでHPなどで募集しました。
〆切り間近になってもなかなか集まらないという事態にイキイキする前にドキドキしてしまいましたが、期間内になんとか集まりました。どれもおもしろいアイディアだったのですが選考の結果、2つにしぼらせていただきました。スミマセン。。アイディアは今後の獣舎設計の際の参考にさせていただきます!!
そしてこの発表会を「世界カワウソの日」にからめて6月2日に行ったというわけです。
世界カワウソの日ってなに?
イギリスにある慈善団体がコツメカワウソを含むカワウソ亜科の野生での現状を広く知ってもらうために毎年5月の最終水曜日に定めた日です。今年2018年だと5月30日が「世界カワウソの日(World Otter Day)」になります。
<立派な各動物園ごとのポスター> <こっちはかみね動物園オリジナルバージョン>
イキイキ計画発表会
まずは普段から行っているイキイキ計画をちょこっとご紹介。実際に見てもらいながら、ナゼこのような取り組みをしているかをお話しました。
<イキイキタッパー登場!>
そして今回応募のあったイキイキ計画の登場です!!
まずはペットボトルにスーパーボールをいれた「イキイキ・ウキ浮き」!!
水面をスーパーボールがプカプカ浮かんでいることでコツメカワウソの興味を引くのが狙いです!ただ、スーパーボールを浮かべるだけだと飲み込んでしまうかもしれないということでペットボトルに入れたという誤飲防止の配慮付です!
では、いざ投入!!
<水面をプカプカ>
しかし初めて見るものだったので警戒してなかなか近づかず、近づいてもなかなか遊んでくれず。。。うーん、これは遊び方に気づくまで少しかかりそうだな。といった感じでした。
<最後までこんな調子でした。>
さぁ気を取り直して次のイキイキ計画!名前から想像付きますね♪「アジ食い競争」
パン食い競争のようにエサのアジを吊るしちゃおう!というものです。これは計画書を見た瞬間にコツメカワウソが遊んでいる姿が目に浮かぶくらいビビッときました!
計画書ではエサのアジと書いてあったんですがちょっと手を加えてペットボトルに入れて氷付けにしてみました。これでアジに辿りつくまでの時間稼ぎにもなるし、暑さ対策にもなります。
では、いざ設置!!
<まさにアジ食い競争♪>
氷漬けのアジはあげたことがあったのですぐに飛びつきました。しかしなかなかアジは食べられず噛んだり、引っ張ったり、水の中から引き込もうとしたり。いろんな行動を見せてくれました!あまりにもイキイキとした姿だったので飼育員もしゃべるのも忘れて見入ってしまいました。ゴメンナサイ。
<これぞイキイキ♪>
しばらく頑張っていると吊るしていた紐から氷が取れてしめしめと持っていくことができました。なんと設置してから食べ終わるまでに約一時間ほどかかっていました。狙いだった採食時間の延長と運動不足の解消ができていましたのでこれは大成功と言っていいでしょう!!
<大きな氷の塊ごとくわえて器用に泳ぐ> <運動後のアジの味は格別♪>
こうして大成功に終わったイキイキ計画発表会でした!!
しかし、少し心残りが。そう「イキイキ・ウキ浮き」です。
なんとか遊んでる姿をブログに載せたいと継続的にプールに入れていたある日、やっと慣れたのか好奇心旺盛なオスの方が前あしで遊んでいる姿を撮ることができました!これで一安心。今後はこれを参考に水面に浮いているもので遊んでくれるような工夫を考えていきたいと思います。お楽しみに!
<前足で器用にパチャパチャ>
ここから先は少し難しい話になりますが、、、
このようなイキイキとした姿を見せてくれるとても魅力的なコツメカワウソ。実は野生では数を減らしているという事実をみなさんは知っていましたか?その原因は様々あります。生息地の環境の変化、餌となる食べ物の減少、そして密漁や狩猟などです。特に日本人に関係が深いのは「密漁」です。最近よくテレビなどで目にすることが非常に増えたこのコツメカワウソですが、本来は東南アジアの水辺に生息しています。ペットとしての需要が高まり、高値で取引されるようになりコツメカワウソの密漁が増加してきました。最近のニュースで「生きたカワウソを東南アジアから日本に密輸しようとして摘発される例が増えている。2017年には現地で押収されたのは45頭。その内日本向けだったのが32頭もいた。」というのを目にしました。ちなみに15,16年には14頭が押収されたがどれも日本向けではなかったそうです。すこし前にもスーツケースの中にカワウソを持ち込もうとしていた日本人のニュースなんかもありましたよね。
国内で繁殖された個体や、ちゃんとした輸出許可書があって輸入された固体は法律上は問題ないのですが、上のように正規のルートではないものに関しては国際条約違反になります。そしてこのニュースも氷山の一角かもしれません。
このような問題はコツメカワウソに限った話ではありません。羽や毛皮がきれいな動物、角や牙が加工品や薬として取引されるもの、希少性の高い動物などなど。。。「ワシントン条約」という言葉を検索してみるといろいろな情報が出てくると思いますので興味のある方はぜひ調べてみてください。
「世界カワウソの日」をきっかけに少しでもカワウソを取り巻く現状を知っていただき、自分達に何が出来るのか?という難しい問いを一緒に考えていただけると幸いです。
さて、大成功に終わったイキイキ計画発表会。今後も続けていきたいと思いますのでお楽しみに♪
動物は普段の顔よりエサを食べている顔の方が好きな飼育員 西野