ちょっと前の話になり恐縮ですが、今年もかみね・おもしろZOOサロンを7月13日(土)に開催しました。今回で8回目を迎える恒例行事。今年は2年前にも登場頂いた西原智昭さんをお呼びして、自身の講演とナショナル・ジオグラフィック社制作のドキュメンタリー映画「地球が壊れる前に」の上映会を行いました。
この映画は、俳優で国連平和大使でもあるレオナルド・ディカプリオ氏が出演し、世界各地を訪ねながら気候変動や環境問題を考えるといった内容のもので、オバマ前大統領なども顔を出し、危機的な状況にある地球環境についての認識を深めることができました。会場の関係からそれほど多くの参加者を集めることはできなかったのですが、事前応募では40名程度集まり、当日参加者も含め狭い会場は、氷山の消失や水没の危機にある太平洋の島々などの衝撃的な映像に、最後まで息を呑んだように静まり返っていました。ここは動物園なので「動物をとり巻く地球環境を考える」というテーマで開催したのですが、映画はむしろ人間社会に迫りくる危機をあぶり出している感じでした(まあ、人間も動物なので間違ってはいないのですが)。驚いたのは、吹替なしの字幕版なのに小学生も何人か参加していたこと。そして彼らも映画とその後に続く西原さんの講演が終わるまでの合計2時間半の間、じっと静聴していたこと。質問の時間でも、積極的に手をあげる子ども達も見られました。
西原さんの話は、事例を紹介しながら小学生でも理解可能な言葉で話されていたこともあるかも知れませんが、例えば、アブラヤシのプランテーションをつくるため東南アジアの森林が伐採され、オランウータンなどの希少野生動物が数を減らしていくといった問題については、単に「アブラヤシが原料となっている様々な食品や日用品をやめましょう」といった紋切り型な話にはならず、ではそういった日常生活を維持しながらも私たちにできることは何か、といった方向へ話をもっていくのでした。アフリカでの森林伐採なども同じです。安価な木材や鉱物資源などのために広大な森林が伐採されていることに関しても、一方的に批判するだけではなく、熱帯材輸出はその国の経済を支える重要な資源であり、何よりも現地の人たちはそのために雇用され生活を営んでおり今すぐそれを止めることは現実的ではない、といった切り口から問題提起をするのです。
確かに、地球温暖化や希少動物保護のため今すぐ開発を止めよう!と言っても直ちに開発が止まることはないでしょう。もちろん訴え続けることは必要だし、理想は掲げるべきです。でも、私たちでも日常生活の中で行動することで結果的にストップがかけられることがある(時間はかかるでしょうが)、それを西原さんは訴えるのでした。具体的には環境に配慮したプランテーションから採れるパーム油を使った製品にはRSPOが認証されるという制度があり、そのラベルを貼ったものを購入するとか、環境・社会配慮型の紙や木材製品などにはFSC認証ラベルなどが貼られ、購入する際はそうした点を確認するなど、ちょっとした気遣いでできることがあるというのです。
環境問題は映画では待ったなしの感でしたが、じゃあ私たちは何をすればいいのか・・・、そいうった意味で視聴後の西原さんのお話は映画をフォローしながらも、グッと現実味を帯びて心に響いたのでした。
なお、講演後、西原さんの近著「コンゴ共和国~マルミミゾウとホタルの行き交う森から」の紹介があり私も購入しました。アフリカでの過酷なフィールドワークや森での生活、内戦、ブッシュミートの現実など身につまされる話から保全やちょっと耳の痛い動物園水族館に期待することまで、アフリカ熱帯林の暗闇に飛び交う幻想的なホタルの群れにたたずむ著者の姿を思い浮かべながら一気に読み切りました。ご一読を!
RSPO認証・・・https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3520.html
FSC認証・・・・https://jp.fsc.org/jp-jp