突然ですが、アフリカへ行ってきました。現在も園長をやらせてもらっていますが、一度は定年退職した身、記念にどこかへと漫然と思っていたところある旅行会社のパンフレットでサバンナの写真を見た瞬間、「コレだ!、コレしかない、サバンナとそこに暮らす野生動物をこの目で見てみたい」という欲望がむらむらと沸き起こり抑えることができなくなってしまったのです。もともと開放感あふれる平原や高いところが好きでアルプスの山々や尾瀬、会津の湿原に足を運んでいたので、ここはサバンナ行って決着つけるしかないか、と。しかもパンフにはキリマンジャロが写っているではないか。あのアフリカ一の高峰です。またもう一つの動機としては、いつかは当園で暮らす動物たちの野生の姿を見てみたい、というのがありました。動物園でよく言われるのが、例えば「ライオンはいつも寝ていてつまんない」というのがあります。これに対し、「野生のライオンも昼はだいたい寝ています」と事務屋の園長は知ったかぶりして答える訳ですが、しかし本当にそうなのか、やはり行ってこの目で見ないと、と常々思っていたところだったので、ゴールデンウィーク出勤の振り替え休日もあるしちょうどいい機会だっぺ、と。一応家内も誘ったのですが、にべもなく「どうぞ、行ってらっしゃーい」の一言。かくしてお一人様限定のツアー「1名1室 野生王国タンザニア・初めてのサファリ満喫7日間」に参加してきたという訳です。以下、連載形式で話を進めたいと思いますので、興味のある方はお付き合いください(途中別なブログが入るかも)。
出発は5月25日。成田を午後10時20分に発ち中東ドーハで乗り継ぎ、目的地キリマンジャロ空港に着いたのは日付が変わった26日の午後3時過ぎ。日本との時差はマイナス6時間。ほぼ1日かけてアフリカの地に降り立ったという事になります。飛行機の中からも、赤茶けて乾燥した大地が眼下に広がりその景観が徐々に緑に覆われ始めていったとき、いよいよアフリカだ!と興奮したのですが、いざ第一歩を踏みしめてみると、うーん、別に何の感慨も起きないぞ。キリマンジャロ空港はいわゆるローカル空港で、ボーディングブリッジもなく普通に飛行機からタラップ下りてスタスタ飛行場内を歩くとJRのどっかの駅みたいな平屋の建物に入り、アラヨって感じで簡単に入国審査も済ますことができました。「あれ?、期待に胸ふくらませて来たのに、アフリカ簡単に入っちゃった」と思いながらも空港を出ると待っていたのが、ジャーン!「立山国際ホテル」の送迎バス。えー!22時間もかけたのに日本に戻ってきちゃった?ちょっと頭がクラクラしました。聞くと、タンザニアでは車は日本と同じ左側通行で、右ハンドルの日本車(中古含む)は結構需要があるとのこと、なるほどね。さあ、本日のお宿「立山・・・」じゃない、キリマンジャロ麓のロッジへ向けて出発!
空港から麓のロッジまでは約1時間。キリマンジャロは標高5,800mもあるので中々全容は拝めないらしく、道中も雲に隠れて見えませんでした。代わって国内2位のメル―山4,500mは雲の上にその頂を見せてくれました。沿道にはひまわり畑やトウモロコシ畑が続き、これまた北海道にでも来たような感じでアフリカ感が乏しかったのですが、どちらもこの国では油をとったり主食用の粉にしたりと重要な農産物のようです。その後は、いたるところで牛やヤギを放牧したり、時折マサイ族の人たちが頭に荷物を載せたりしているのを見ると、「あーやっぱりアフリカなんだな」感が沸いてきました(このくだり、私のアフリカへの一方的な思い込みで書いてますのでお許しを)。
ロッジでは、結婚式が行われていたようでのどかに新郎新婦がラクダに乗って歩いていました。のどかじゃなかったのは、部屋に入った時。頑丈な木製ドアが、まるで銃弾でも撃ち込まれたかのように穴だらけだったのです。タンザニアでは、蚊を媒介とするマラリアなどの感染症に気をつけろ、と散々言われていたので、高ーい予防薬を買って飲み、部屋でも蚊取り線香を焚き、更に電気蚊取り器や虫除け剤を塗りたくったりと、これでもかこれでもかと幾重にも防御策をとっていたのにドアがこれじゃ、ダダ洩れじゃーん。熟慮の末、トイレットペーパーを小さく丸め、穴という穴に詰め込むことに。作業しながら、鼻血を出してチリ紙(と昔は言った)を丸めて鼻に詰めた子供の頃が偲ばれました。うん、完璧じゃ。あとで話を聞くとほかの部屋でもそうだったらしく、よく見ると木の節のところが穴開いてるので何かの意味があるのかもしれません。
夕食時にはツアー参加者12名の簡単な交流会。今回のお一人様12名は動物に関心がある人だけでなく、全く関わりがない方もいて、異種交流がなかなか面白かったのでした。皆さん結構ご年配で、男性5名の中では還暦過ぎの私でも最年少!自己紹介では自分の経歴や関心事などを話せというので、身分を明かすことに。すると、一同「おー」というどよめきが。ナンダ、このどよめきは。そこですかさず「でも、あまり動物のこと聞かないで下さいね」と念を押すことも忘れませんでした。だってアフリカの鳥やレイヨウ類、よくわかんないもん。かくして夜は更け、翌日200kmのサファリドライブに備え早めに就寝することにしたのでした(でも2時半にパッチリ目が覚めちゃいました、日本なら朝8時半なのでまだ体が日本仕様なんですね)。
・・・つづく(なかなか動物出てこなくてすいません)
※1宣伝です。このブログ「アフリカ行ってきました」の生の報告会をやります。詳しくは、当ページのイベント情報をご覧ください。
※2 飼育員ブログ「飛び出せ動物園」で井上飼育員のボルネオ編が終わり、次は大栗飼育員のアフリカ篇が予告されました。本編はそれとは別で「書きたくてうずうず」しちゃった私が先にだしますが、希薄な内容のこのブログと併せ、より動物視点で密度の濃いアフリカ篇もお楽しみに。