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staff blog園長室ブログ

最近読んだ本から考える

2022年11月24日

 2022年もそろそろ終盤ですが、国内の動物園について書かれた本が今年ポンポンと出版され、たまたま手に取ったので紹介したいと思います。

 まず3月に発行された「岐路に立つ「動物園大国」」(太田匡彦ほか2名・著)、そして11月に発行された「ルポ動物園」(佐々木央・著)。共通しているのはいずれの著者も、動物園関係者ではなく新聞社や通信社の記者さんです。つまり動物園内部からではなく、外部の目によって書かれたルポルタージュ的内容となっており動物園に訪れる一般のお客さんと同じ目線で書かれています。またいずれの著者も特に動物が好きとかいうことではないようで、記者として取材を重ねる中で、取材魂に火がつき日本の動物園の抱える問題にたどり着いたような印象を受けました。

晩秋
《晩秋の動物園》

 「岐路に―」のほうは、動物の移動を通して見えてくる各園が抱える動物収集・維持の問題に端を発し、動物福祉や保全のあり方、市民やメディアの動物に対する向き合い方にまで考察の裾野を広げていきます。一方「ルポ―」のほうは、生き物紹介を連載する企画として15年にわたって各地の動物園水族館を取材する中で感じた動物園としての原罪や擬人化の問題など著者なりの動物園感、動物感が実際に現場で携わる飼育や運営者の言葉とともに展開されていきます。このように書くと、今の動物園のやり方に対する批判や糾弾する内容に受け取られかねませんが、決してそうではなく、これまでメディアが取り上げなかった問題が第三者の目で掘り下げられた、ということかなと思います。

本
《最近読んだ本・2冊》

 動物園で話題になることといえば、赤ちゃんが誕生した、とか新しい動物がやってきたなどの明るい話題か、動物の死や動物脱走、あるいは動物による飼育員の事故など暗い話題のどちらかです。また、テレビのバラエティ番組では、可愛い動物をタレントさんとともに紹介するようなものがほとんど(といっても私はあまり見ないのですか)。最近はコロナのせいか番組ネタとしてよく動物園モノが扱われるようです。しかしそうした情報や番組構成からは動物園の抱える本質的な問題はほとんど見えてきません。今回の2冊はそうした表層的な話題の奥にある問題を見事に浮き彫りにしてくれました。ちょっと前なら動物園運営側としてはあまり触れてほしくないような部分もありますが、その辺も含めて動物園初心者には結構刺激的な内容になってるかも知れません。

 実は動物園で働く職員は私を含めてどうして動物園があるのか、ということに結構思いを巡らせています。もちろんいわゆる4つの目的・役割はあるのですが、それはむしろ近代になってあとから社会的要請に応じて編み出されてきたものです。そもそも動物園は何故あるのか。必要なのか。今回の本の著者たちも取材を重ねる中でやはりその問題に行き着きます。ここでその問題を取り上げることはしませんが、運営側の考え方も披露されていますので興味のある方はぜひご一読をお勧めします。なお、両著とも、最後は動物や動物を飼育する飼育員の幸せにまで言及していることを付け加えておきます。

(園長 生江信孝)

2022年11月24日