特集
命のバトンつないで

命のリレー、たいせつな人を守るためにできること

9月9日は救急の日。救急業務や救急医療について理解と認識を深める日です。今号では、その救急業務や救急医療を支えるために、4月から運用が始まった「ラピッド式ドクターカー」について紹介するとともに、心臓や呼吸が止まってしまった人のそばに居合わせたとき、その命を守るために私たち市民一人ひとりに求められる役割についてお伝えします。

ラピッド方式 ドクターカー運用開始

≪ラピッドカー≫
[ラピッド=迅速な]
「青」のライン:太平洋の美しさ
「赤」のライン:ラピッドカーに携わるスタッフの熱い気持ち
「緑」のライン:県北地域の山並み
車体ナンバー:99-34(救急3市)

県北臨海3市の救急医療体制の新たな柱に

 今年の4月から、新たな救急医療システム「ラピッド方式ドクターカー」、通称「ラピッドカー」の運用が始まりました。
 「ラピッド」とは「迅速」の意味で、ラピッドカーは、消防の要請を受けた日立総合病院・救命救急センターの医師や看護師が、重症患者がいる救急の現場などに向かうための専用車両です。
 救急医療体制が充実し、地域の住民が安心して暮らせるようにと、日立市、高萩市、北茨城市の茨城県北臨海3市が協力し、新たな医療サービスとして導入しました。

3月に「茨城県県北臨海3市ラピッドカーの運営に関する協定」を締結

医師や看護師が、救急現場に直行

 最大の特徴は、24時間、365日いつでも、医師・看護師が直接救急現場に駆けつけ、医療行為ができることです。日立市では、医師が治療を開始するまでの時間が、救急車で患者を医療機関に搬送する場合と比べて平均7分44秒短縮されました。既に多くの活動実績があり、心肺停止からの社会復帰・心拍再開の事例が出ています(下、「ラピッドカーの活動実績」)。
 また、医師は現場に到着するまでの間に、現場で活動する救急隊に携帯電話などで治療の指示を出すことができます。医師の指示がなければ、処置できる範囲が限られている救急隊にとって、とても大きなメリットと言えます。

新型車両導入により更なる救命率向上に期待

 今年の6月、従来使用していた救急車よりも小型の新型車両(写真上)を導入。より早く・安全で、スムーズな走行が可能になりました。
 日立市では、平成16年1月から、救急車に医師や看護師を乗せて救急現場に出場する「ドクターカー」の運用を行っており、今回導入した車両との同時運用で、最大2件の要請に応えることが可能となりました。これにより、更なる救命率の向上が期待されています。

ラピッドカー出場の流れ

*ラピッドカーは医師・看護師が救急現場に向かうための車両なので、患者は救急車で搬送
119番通報
:ラピッドカーが直接現場に出場する場合
:患者が遠隔地にいるなどの理由から、救急現場とは別の場所で、患者を乗せた救急隊とドッキングする場合
・消防本部指令室(日立市)
・いばらき消防指令センター(高萩市、北茨城市)
119番通報受信時に指令室(センター)の判断で要請
【要請の目安】
■心肺停止又は重症と判断した場合
■傷病者救出に時間を要する場合
■多数の傷病者が発生した場合
救急車出動
(1)出場(途中で救急隊とドッキング)
日立総合病院
救命救急センター
(医師・看護師・運転員)
ドッキング場所
(2)医師、看護師が救急車に搭乗

(1)救急車がドッキング場所へ

(1)現場へ出場
現場救急隊の判断で要請
直近の2次医療機関
または
日立総合病院

(2)医師、看護師が救急車に搭乗
現場(救急車到着)

ラピッドカーの活動実績

【出場件数】 *H28.4.1〜7.31

日立市 高萩市 北茨城市 合計
88件 19件 20件 127件

【出場により成果が出た事例】
*H28.4.1〜6.30までに搬送された患者

要請市 年齢 性別 傷病名 予後
高萩市 60歳 男性 脳卒中 麻痺改善し退院
北茨城市 57歳 女性 心肺停止 心拍再開し退院
高萩市 85歳 男性 脳卒中 麻痺改善し退院
高萩市 78歳 男性 狭心症 後遺症なく退院
日立市 87歳 男性 心筋梗塞 後遺症なく退院
高萩市 49歳 男性 心筋梗塞 後遺症なく退院
日立市 87歳 男性 心筋梗塞 後遺症なく退院
高萩市 73歳 男性 心筋梗塞 後遺症なく退院

その他:心肺停止からの心拍再開 5人
心肺停止からの社会復帰者数 1人


【医療介入までの平均短縮時間】
*H28.4.1〜6.30の平均

日立市 高萩市 北茨城市
7分44秒 12分33秒 14分56秒

ラピッドカーシステムと救命救急センターの両輪で、市民の皆さんの安心感に貢献したい

日立総合病院救命救急センター 中村謙介センター長

Interview
救命救急のドクターに聞く

  今回導入された車両は、非常に小回りが利くので目的地に着くまでの時間がかなり短縮されました。
 例えば、最重症の心肺停止、心臓が止まってしまっている状態では、脳に血液が届かず、分単位で脳のダメージが進行していきます。このことで、後遺症が残ることや、社会復帰が困難になってしまうこともあります。
 正に生きるか死ぬかの救命救急の現場で、我々が1分1秒でも早く現場に到着でき、医療介入までの時間を短縮できることは医学的に見てもとても大きなこと。その1分1秒がすごく短縮されたな、と感じています。
 また、ラピッドカーの導入で、医師だけではなく、看護師、医療従事者、救命救急センターで勤務している全てのスタッフの「県北の救急を守る」という気構えが強まり、士気が上がったなというのが一つ大きな実感としてあります。
 さらに、日立総合病院の救命救急センターは、「全ての救急車を断らずに、必ず受け入れる」という目標でやっています。そしてようやくこの1年以上、100パーセントに近い高い応需率を達成できています。
 これからも、重症患者にいち早く手当てを行うことを目的とするラピッドカーシステムと、県北地域で唯一、重篤な患者を24時間体制で受け入れる第三次救急医療を担う日立総合病院救命救急センターとの両輪で、全ての患者に質の高い医療を提供し、県北地域の、そして茨城県の救急医療を支えていければと考えています。

ラピッドカーの前で

日々の医療カンファレンスの様子

誰にでも起こり得る「そのとき」のために

 突然、目の前で人が倒れ、心臓や呼吸が止まってしまったら…。現場に居合わせ、119番通報で救急隊を呼ぶのは私たちかもしれません。救急隊が到着するまでの間、尊い命を助けるために、どのようなことがたいせつなのか御紹介します。

鍵を握るのは、「バイスタンダー」

 突然、目の前で人が倒れ、心臓や呼吸が止まってしまった。このようなとき、救急現場に居合わせた人のことを「バイスタンダー」と言います。
 そして、バイスタンダーが、心肺蘇生(そせい)法(CPR)とAED(自動体外式除細動器)の使用で、止まってしまった心臓と呼吸の動きを助けることを「一次救命処置」と言います。心肺蘇生法では胸骨(きょうこつ)圧迫と人工呼吸を行いますが、その最大の目的は、倒れた人の脳や心臓に酸素と血液を循環させることです。人工呼吸ができない場合や、AEDがない場合は、救急隊が到着するまで、胸骨圧迫だけでも続けることがたいせつです。

大事なのは、119番通報後の「8分間」

 119番通報から救急隊が現場に到着するまでには、全国平均で8分程度かかると言われていますが、心臓や呼吸が止まった人の命が助かる可能性は、時間の経過とともに急激に低くなっていきます(グラフのとおり)。救急隊が到着するまでの間、バイスタンダーによる一次救命処置がなければ、助かる命も助けられないおそれがあるのです。
 また、救急隊到着までにバイスタンダーがAEDを使用した場合、使用しなかった場合より社会復帰率が2倍近く高くなるという統計もあり、迅速で適切な一次救命処置がどれほど重要であるかが分かります。

【応急手当と救命曲線】

*改訂4版「応急手当講習テキスト」から抜粋

救命のリレー、第一走者は私たち

 私たちがバイスタンダーになる「そのとき」は、何の前触れもなく突然訪れます。もしものとき、落ち着いて、そして勇気を持って行動するために、心肺蘇生法やAEDの使用方法を身に付けておくことが、大変重要です。バイスタンダーから救急隊へ、そして救急隊から医師へ、命のバトンをつなぐ「救命のリレー」。第一走者は私たちなのです。

市民の皆さんには、救命のリレーの第一走者として、命のバトンをつないでほしい

Interview
救急救命士に聞く

 救急隊が到着するまでに、バイスタンダーによる心肺蘇生法(以下、CPR)の実施がなければ、傷病者が元の状態で社会復帰することは困難です。それは過去の統計からも明らかで、バイスタンダーの勇気ある行動にかかっているのです。
 昨年、市内では、200人以上が心肺停止で救急搬送されましたが、社会復帰につながったのは12人。このうち、バイスタンダーの助けがなかった事例は一つもありません。
 市ではCPR普及のため、平成22年から全国に先駆けて、市内全ての中学1年生を対象に普通救命講習を行っています。最近、市内で心肺停止に陥ったかたに、高校生がCPRを行い、心拍が再開したという事例が出ました。その生徒は、「中学1年生のときに、心肺蘇生法の勉強をした。だからできた。」と。そういった事例がだんだん増えてきています。
 市ではその他、高校、自治会、企業、介護施設など年間延べ4,000人以上に救命講習を実施しています。
 理想的なのは、市民全員がCPRができ、誰かが倒れたら周りの人が手を差し伸べられることです。
 ラピッドカーの導入で、日立市における救命のリレーシステムが完成したと言えますが、その第一走者は、他ならぬ市民の皆さんです。どうか、救急隊に命のバトンを渡してください。私たちも第二走者として最善を尽くしますので、いっしょにがんばっていきましょう。

日立市消防本部 日立消防署
救急救命士 野口勝弘

もしものとき、たいせつな人の命を守るために
〜心肺蘇生法の流れを紹介〜

救命処置の手順

(1)意識の確認
「大丈夫ですか」、「もしもし」と大声で呼びかけながら、肩をたたいて意識を確認する。
(2)助けを呼ぶ
大きな声で「誰か来てください!」と周囲の人に協力を求め、「あなたは119番へ通報してください」、「あなたはAEDを持ってきてください」と具体的に依頼する。
*協力者がいない場合、まず119番通報し、指示を仰ぐ。
(3)呼吸の確認
胸や腹部の上がり下がりを見て、正常な呼吸をしているか判断する(10秒以内)。
(4)胸骨圧迫 *呼吸がない場合
(1) 胸の真ん中に手のひらのつけ根を置く。
(2) 1分間に100回の早いテンポで、30回連続して胸骨を圧迫する(胸が5センチメートル沈むくらいの強さが目安)。
(3) 気道を確保し、2回人工呼吸を行う(1回1秒以上)。
(4) (2)と(3)を繰り返し行う。
*協力者がいる場合、(2)は、1〜2分を目安に交代して実施
5)AEDを使用
(1)ふたを開けて電源を入れる。
(2)電極パッドを貼る。
(3)電気ショックが必要な場合はショックボタンを押す。
*ショックが必要かは、AEDが判断します。

キーワードは、
■落ち着いて
■素早く
■自信をもって

救命処置の手順を実演してくれた、日立市消防本部日立消防署の田村悠輝士長

救われるのは、家族や友人かもしれません

 もし私たちが、けが人や急病人が発生した現場に居合わせたら、不安に思ったり、焦ってしまったりするかもしれません。
 しかし、私たちが救命処置を行うことで、誰かの尊い命を救い、後遺症を軽減して社会復帰に導くことができるかもしれません。
 そして、その「誰か」は、私たちのたいせつな家族や友人かもしれないのです。
  「そのとき」に、勇気を持って行動できるよう、正しい知識と技術を身につけておきましょう。

心肺蘇生法やAEDの使用方法などを学びましょう!!

消防本部では、無料の普通救命講習会の参加申し込みを、随時受け付けています

定員

10〜30人程度 *個人参加の場合は受講調整あり

時間

9時〜12時 *開催時間は応相談

内容

心肺蘇生法、AED使用法、異物除去法、止血法、体位管理など *技術習得で修了証を発行

申し込み

お近くの消防署へ

日立消防署 電話番号 0294-24-0119

多賀消防署 電話番号 0294-34-0119

臨港消防署 電話番号 0294-52-0119

北部消防署 電話番号 0294-43-0119