特集 公共交通の取組
地域の「足」を考える

 路線バスは、通勤や通学だけでなく、お年寄りの通院や買い物など、地域の「足」として欠かせない交通手段です。しかし、自家用車の普及などで、路線バスの利用者が減少しています。このままでは路線バスの廃止や減便が行われ、高齢者や学生などの交通手段が失われるおそれがあります。
 そのような中、地域の「足」を維持しようと、住民や交通事業者、行政が連携して、さまざまな取組を行っています。今号では、その取組の一部を紹介します。

路線バスの厳しい現状

 市内を運行するバス路線の多くは、年々利用者が減少しています。平成24年度の利用者数は、平成4年度の利用者数と比較すると、約6分の1までに減少していることがわかります(下図の通り)。

利用者が減少すると…

 利用者の減少により、運賃収入が低下すると、赤字路線の廃止や減便などが行われ、利用者にとって不便になります。不便になることで利用者がさらに減少し、また赤字路線が廃止されて不便になるという悪循環に陥ってしまいます(下図のとおり)。

 路線バスを維持するためには、本当に必要な路線を取捨選択し、地域住民のニーズに合った利便性の高いバスサービスが必要になります。そのためには、地域住民、交通事業者、地域企業、行政などが互いに連携し、それぞれの役割を果たすことが重要です。

移動手段は「地域の財産」 〜パートナーシップ協定〜

 関係者が連携した取組として、「パートナーシップ協定」があります。パートナーシップ協定は、地域と路線バス事業者、行政が利便性向上や乗車促進を目標に協定を締結し、協働で乗車促進活動を行うことにより、使いやすいバス路線の実現や現行路線の維持を図る取組です。
 地域のニーズを踏まえた運行ダイヤやルートに見直すとともに、利用促進イベントや広報紙の配布などを通して、路線バスの実情や必要性などについて理解を得ながら、利用者の確保に努めています。
 平成22年度に諏訪学区から始まり、現在では5つの地区が、この取組を行っています。

路線バスに慣れ親しむ取組

 市では、交通事業者と協働して小学生及びその保護者を対象とした「バスの乗り方教室」を開催しています。バスを身近に感じながら乗り方やマナー、料金の支払い方など、利用する際の基本的な知識を学んでもらうことで、利用促進や維持存続につなげるのがねらいです。

(1)(2):バスの乗り方教室

地域の「足」を守るために

 市では、今回紹介した取組のほか、路線バスなどの公共交通を維持するために、日立市公共交通会議を設置して検討を進めています。
 また、今年度、「日立市公共交通網形成計画」を策定し、将来にわたり持続可能な交通体系の再構築を図ります。
 今車を運転できるかたも、将来は、路線バスが必要になるかもしれません。「いつかは自分も」と思って、路線バスを残す方法をいっしょに考えてみませんか。

(3):公共交通会議
問合せ 都市政策課 内線224

団地の「足」である路線バスを、将来にわたり維持したい

中丸路線バス維持検討委員会
福士 邦彦さん

 「中丸地区の路線バスが赤字路線になっている。存続が危ぶまれるため、路線バスのあり方の検討を協働で進めたい。」との申し出が、市と日立電鉄交通サービス株式会社からありました。そこで中丸団地として、「中丸路線バス維持検討委員会」を設立し、パートナーシップ協定に向けた取組を始めました。
 まず、住民向けにバスの利用状況などに関するアンケート調査を実施しました。
 さまざまな意見があるなかで「いずれ自分も必要になる」「学生や高齢者のためになんとか存続してほしい」などの意見や、「団地内を循環してほしい」「スーパーの近くを通ってほしい」などの意見が目立ちました。
 そこで、平成24年2月から、常陸多賀駅から団地近くのスーパーマーケットを経由して、団地内を1周するルートを設定し、実証運行を実施しました。狭い路地に対応した小型バスを使用し、団地内には10箇所の乗降ポイントを設けて、なるべく利用者の自宅近くで乗り降りできるようにしました。
 また、路線のルートや時刻表、バスの乗り方を掲載したチラシを配布したり、手作りのポケットサイズ時刻表を各家庭に配布するなど、さまざまな乗車促進活動を行いました。
 おかげさまで、実証運行期間の目標値、対前年同月比105パーセントを上回る120.3パーセントの乗車率を達成することができ、平成24年4月から本運行に移行しました。
 「自宅の前から乗れるので助かる」「買い物が便利になった」などのうれしい声も届いています。
 これからも、団地の皆様の協力をいただき、意見や要望を聞きながら、電鉄バス・市と連携して使いやすい団地の「足」を維持していきたいですね。

パートナーシップ協定方式実施地区

  • 諏訪学区
  • 高鈴台団地
  • 中丸団地
  • 塙山学区
  • 青葉台団地・堂平団地

パートナーシップ協定方式実施地区の路線バス利用者の声

  • 今までは、買い物帰りの荷物が大変でしたが、自宅近くで降りることができるので便利です。
  • バスの実証運行は、団地の住民が路線バスのことについて考えるきっかけになり、たいへん良いことだと思います。
  • 誰でもいつかは車の運転ができなくなります。そうなると頼りになるのは公共交通なので、知恵を出し合って継続してほしいです。
  • 運転手さんがとても親切です。昼間は高齢者の利用が多いようですが、「ゆっくりと降りてください」「気を付けてください」など丁寧に声をかけていました。